2022/10/29
静岡市民が懸念する静岡市長と静岡県知事の”不仲” 携帯番号入手したけど……
■台風15号による浸水被害5645件 清水区で断水解消まで約2週間
先月の台風15号によって大規模な断水が発生するなど、静岡市は防災対策の課題を露呈した。静岡市民、特に清水区民が不安や不満を募らせているのが、自衛隊派遣要請の判断。一部の市民は田辺信宏市長と川勝平太知事の不仲が、決断の遅れにつながった原因の1つと考えている。しかし、田辺市長は28日の定例会見で「誤解」と強調し、川勝知事の携帯電話の番号を入手したことも明らかにした。
台風15号から1か月以上が経った。だが、静岡市では浸水被害などで日常生活を取り戻せていない市民がいる。田辺市長は定例会見で「国や県と連携しながら、復旧のスピード感を上げていくことに全力を尽くしてまいりたい」と語った。
市によると、現時点で市内では床上4168件、床下1477件の浸水被害が確認されている。特に、巴川沿いに被害が集中しているという。田辺市長は「これまで県と連携して遊水地や放水路の整備を進めてきましたが、記録的な雨が短時間に降り、排水能力を上回りました。さらなる治水対策を進めることが不可欠」と説明した。
田辺市長が「大きな影響を与えてしまいました。大変申し訳なく思っています」と市民に改めて謝罪したのが、清水区の断水。断水は6万3000戸に及び、解消まで約2週間かかった。
断水が大規模かつ長期化した最大の原因は、興津川の承元寺取水口が流木や土砂で埋まったことにある。この取水口から、清水区の8割の市民に水が供給されている。
■自衛隊の災害派遣要請で田辺市長と川勝知事の不仲露呈
静岡県は自衛隊に災害派遣要請し、取水口の復旧作業や市民への給水作業で強力なサポートを受けた。市民は自衛隊には感謝する一方、派遣要請が災害発生から3日後だったことから、川勝知事や知事に派遣要請を求める立場にある田辺市長への不満は小さくなかった。
田辺市長は10月11日の定例会見で「首長間は携帯電話でやり取りするのが常識だが、知事とは緊急時に連絡し合う関係性ができていません」と口にしている。“周知の事実”でもある不仲説を認めた形だ。そして、こう続けた。
「知事の携帯番号は教えてもらえませんでした。直接連絡ができない状況が続く中、今回の災害が発生してしまいました」
田辺市長の発言に対し、川勝知事は静岡市からの自衛隊派遣要請を「じりじり待っていた」と明かしている。また、「携帯番号を教えてと言われて拒否したことはない。田辺市長の話は虚言」と否定した。
■田辺市長は川勝知事の携帯番号入手 1回かけたがつながらず…
災害対策基本法では、市町村長が都道府県知事に災害派遣の要請を求められるとある。ただ、自衛隊法では、市長や町長らの要請がなくても独自の判断で要請できる。今回の災害でも、川勝知事は自らの決断で派遣要請は可能だった。
田辺市長は28日の定例会見で、台風被害からの復旧について「県と連携して」という言葉を繰り返した。台風15号による被災直後も、静岡市と県の職員は連携していたと強調する。そして、田辺市長は被災後に問題視された川勝知事の携帯番号を入手し、課題解決を訴えた。
「(市長と知事の)ホットラインがつながっていなくても、発災初日から県と市は自衛隊の災害派遣要請について議論を深めていました。一生懸命に連携してくれたと思っています。知事からは携帯番号を教えていただきました」
だが、ホットラインの会話は、まだ実現していないという。「1回かけましたが、通じませんでした。携帯番号をいただいたので、お礼を申し上げようと思ったのですが」。静岡市民の不安解消には、まだ時間がかかりそうだ。
(SHIZUOKA Life編集部)