2022/12/21
就職や転職のカギになる面接 静岡県のテレビ局元取締役が明かす判断基準
■選考の終盤は「加点法」 ボーダーラインで生きる他人にない強み
何百、何千人と面接をしている会社の取締役は、受験者のどんな部分を見ているのか。就職、転職を考えている人はもちろん、当面は面接を受ける機会がない人も気になるところだろう。静岡県にあるテレビ局の元取締役が、採用と不採用のボーダーラインにいる受験者の判断基準を明かした。
今年7月に静岡市でカフェをオープンした大長克哉さんは昨年まで、静岡県のテレビ局で取締役を務めていた。新入社員や中途採用者を毎年面接し、会社に必要な人材を見極めてきた。
取締役が担当するのは主に最終面接や、それに近い段階での面接。難しいのは、採用と不採用のボーダーラインにいる受験者のうち、どちらを合格にするかの判断だ。受験者は経歴や長所、志望動機などを会社側に一通り伝え終わっている。大長さんは、選考の終盤は受験者の評価を「加点法」で決めていたと話す。
「残り1枠に複数の受験者が残っていて面接者の意見が分かれた場合、受験者の長所を加点します。他の人にはない強みがあった方が、入社後に大きな活躍ができる可能性が高いためです」
■能力以上に重視する要素は熱意 熱意が表れるのは準備
加点する上で、受験者の能力以上に重視する要素もある。どれだけ入社したいかという熱意だ。大長さんは「仮に本命の会社ではなくても、なぜ入社したいのか、入社してどんな仕事をしたいのか、最終的には熱い気持ちが伝わってくる受験者は会社側に採用したいと思わせます」と語る。
テレビ局の受験者は当然、各局の番組を事前に視聴してから面接に臨む。地方局の場合、首都圏などに住む受験者は普段番組を見られないが、できる範囲で情報を集める。
その準備には熱意が表れる。入社したい思いが強ければ、同じ時間帯の他局の番組と比較したり、実際に働いた時のイメージを膨らませたりする。面接で上手く話せるかどうかよりも、どれだけ入社したいかを伝えることが重要になる。
たとえ同業他社の採用試験を受けていても、テレビ局で働きたい熱意を買うこともある。過去には、最終面接で感情があふれて泣き出した受験者もいたという。
■最終面接で涙を流して訴えた受験者も
その受験者は、大長さんに「最後に何か言いたいことはありますか?」と質問されると「どうしてもテレビ局で働きたいんです。もう最終面接で落ちたくありません。入社させてください」と涙を流して訴えた。他にも複数のテレビ局で最終面接まで進んだものの、不採用となっていた。
大長さんは最終面接までの経緯を把握しており、受験者の熱意や入社後のビジョンを評価していた。そして、最後に泣き出した姿を見て「一生懸命に思いを伝えようとする強い意思が伝わってきました。この会社が第一志望ではなかったかもしれませんが、少なくともテレビ局への強いこだわりを感じました」と振り返る。
熱意には当然ながら根拠が必要になる。ただ、最後は気持ちの差が合否を分けるケースもある。面接の相手は人間。感情が左右されるのは避けられない。
(間 淳/Jun Aida)