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2023/02/19

静岡発の人気ケーキ店の秘密 高級フルーツを扱う理由 ホールで店頭に並べるワケ

タルトをホールのままショーケースに並べるキルフェボンのスタイル

静岡県産の紅ほっぺのタルトも人気

■フルーツタルト専門店「キルフェボン」 全国に10店舗

9坪の小さな店からスタートして、今は全国に10店舗。静岡市に本社を置くフルーツタルト専門店「キルフェボン」の名前は県外でも広く知られている。商品展開や接客など他のケーキ店とは一線を画す唯一無二の存在となっているが、高級フルーツを使った商品やタルトをホールのまま並べるショーケースなど、独自のブランディングには理由がある。

 

30年ほど前、キルフェボンは静岡市のわずか9坪の店から始まった。その名は、すでに全国区。ケーキ好きなら誰でも知っているだろう。商品を初めて見る人は、その華やかさや美しさに表情が緩み、感嘆の声が漏れる。

 

キルフェボンが今や静岡市を代表する店となったことを象徴するように、静岡市の東中学校で開催された職業講話にブランドアドバイザーの柿畑江里さんが講師に招かれた。これは「どうする静岡?」と題した総合的な学習の一環で、市内で活躍する各業界のスペシャリストが自らの仕事を生徒に語る授業。柿畑さんのほかに、プロスポーツチームからバスケット「ベルテックス静岡」とサッカー「清水エスパルス」、林業や農業など計13業種の講師が集まった。

静岡市の東中学校で行われた職業講話で講師を務めた柿畑さん

■接客も販売方法も制服も キーワードは「ワクワク感」

キルフェボンは、なぜ店舗拡大に成功し、長年愛される店となっているのか。柿畑さんが挙げたキーワードは「ワクワク感」だった。他のケーキ店にない特徴の1つが、360度どこからでも眺められる大きなショーケースにタルトをホールのまま並べるスタイル。味だけではない、ケーキの楽しみ方を表現しているという。

 

「ケーキは毎日食べるものではなく、お祝いや贈りものなど、お客さまにとって特別な時に食べることが多いです。食べる時はもちろん、商品を見た時にも驚いたり、ワクワクしたりしてほしいと思っています」

 

キルフェボンの接客は、来店客の隣に立って話をしながら購入者それぞれが、一番楽しめるケーキを選ぶサポートをするスタイル。店内の飾りつけも季節やイベントごとに変え、一歩店に入った瞬間からワクワクできる空間をつくり上げている。

 

ワクワク感はスタッフの制服にも表れている。衛生面への配慮だけが目的であれば、髪の毛が落ちないようにネットや無地の帽子を身に着ければ問題ない。しかし、キルフェボンのスタッフは華やかで愛らしいバンダナを頭に巻いている。しかも、バンダナの巻き方は自由だという。柿畑さんは「仕事中は常に身に着けるものなので、楽しい気分で働く工夫です」と話した。

クラウンメロンを使ったタルトと佐藤錦のタルト

■1カット2000円 高級フルーツのおいしさを知る機会に

キルフェボンには現在、700種類のタルトがある。イチゴだけでも60種類を超える。フルーツの収穫は天候に左右されるため、店頭に並べられる商品は年によって変わる。ただ、新しい商品を作り続けることで、繰り返し訪れるファンの心もときめかせている。

 

ショーケースを見ると、1カット2000円前後とケーキとしては驚くような価格の商品もある。季節に合わせて、高級フルーツの代名詞、クラウンメロンや佐藤錦を使った特選タルトが登場する。柿畑さんは高級フルーツを使う理由を説明する。

 

「高級メロンを1玉買えば1万円を超えてしまいます。ケーキにすれば2000円ほどで、その味を十分に楽しめます。ケーキとしては高価格ですが、普段食べる機会が少ない高級フルーツのおいしさを改めて知るきっかけになったらと思っています」

 

味でも見た目でも来店客のワクワク感を引き出すキルフェボンのタルト。特別な時間を演出するために積み重ねたこだわりが、30年愛されるゆえんとなっている。

 

(鈴木 梨沙/Risa Suzuki

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