生活に新しい一色
一歩踏み出す生き方
静岡のニュース・情報サイト

検索

情報募集

menu

2023/02/26

野球もサッカーも早生まれはプロで成功? 誕生月とスポーツに驚きの関係性

小、中、高校で野球をする選手は生まれた月で傾向が

■富士市出身・東農大の勝亦陽一教授 野球を中心にスポーツ研究

野球やサッカーなどプロスポーツ選手を目指す子どもたちは、生まれた月によって有利、不利があるのか。静岡県富士市出身で東京農業大学教授の勝亦陽一さんが、興味深い研究を進めている。1~3月の早生まれはプロになる割合は低いが、プロで大成する比率が高い。生まれ月とスポーツの関係性を知ると、子どもたちの可能性は広がる。

 

富士市で生まれ育った勝亦さんは現在、東京農業大学の応用生物科学部で教授を務めている。自身も学生時代に経験していた野球を中心にパフォーマンスを向上させる体の使い方やトレーニング方法を考案し、小学生からプロまで幅広い選手をサポートしている。

 

勝亦さんが長年研究してきたテーマの1つには「生まれた月とスポーツ参加の関係性」がある。何月に生まれたかによって、小、中、高校での全国大会出場やプロ選手になる可能性は変わるのか。その背景に、どんな要因や問題があるのかを分析してきた。勝亦さんは研究の意義について、こう話す。

 

「正しい情報を知っておかないと、子どものやる気、目標や夢にも影響します。成功する可能性のある選手が誤った考え方で競技を離れてしまうかもしれません」

 

野球に関するデータでは、小学生で競技をしている選手に生まれ月の偏りはほとんどない。1年を3か月ずつに分けると、最も多い4~6月生まれは全体の26.9%、最も少ない1~3月の早生まれは22.5%となっている。

 

■全国大会出場選手 45%が4~6月生まれ 早生まれは6%

だが、全国大会に出場した選手の生まれ月は4~6月が圧倒的に多く、年度の前半にあたる4月から9月生まれまでの選手が75%を占める。さらに、選抜チームに入った選手になると、その割合は一層高くなる。

 

【野球をしている小学生の生まれ月】

46月 26.9

79月 25.1

1012月 25.5

13月 22.5

 

【全国大会に出場した小学生の生まれ月】

46月 45.2

79月 29.9

1012月 18.5

13月 6.4

 

【選抜チームに入った小学生の生まれ月】

46月 56.1

79月 24.9

1012月 14.8

13月 4.2

※データは全て勝亦陽一さんの研究

研究内容について掛川市で講演した勝亦さん

■小学生→中学生→高校生 野球継続する早生まれの選手が減少

成長段階の差が顕著に表れる小学生では、4~6月に生まれた子どもの方が体は大きい傾向にあり、野球のパフォーマンスにおいても有利になる。3月生まれと4月生まれの子どもは、成長段階がほぼ1年も違う。小学生年代の1年は体の成長に大きな影響がある。

 

体が大きくなる時期は遅くても、どの子どもにも成長期があり、結果的に中学や高校で成長の早い同級生に追いつく。だが、晩熟な選手は早熟な選手を見て劣等感を抱きやすい。その結果、晩熟な選手は野球から離れてしまう。

 

勝亦さんの研究によると、小学生では生まれた月によってほとんど偏りのなかった選手の割合は、中学、高校とカテゴリーが上がるごとに「早熟優位」となっている。高校まで野球を続ける選手の割合は、4~6月が1~3月の早生まれの2倍近くなっている。

 

【野球をしている中学生の生まれ月】

46月 29.5

79月 27.5

1012月 23.5

13月 19.6

 

【野球をしている高校生の生まれ月】

46月 32.2

79月 28.8

1012月 21.2

13月 17.8

※データは全て勝亦陽一さんの研究

 

■プロ野球選手は早生まれ少数派 タイトル獲得者は立場逆転

この傾向はプロ野球でも変わらない。勝亦さんが約2000人を対象にした調査では、4~6月生まれの選手が全体の3分の1を超える34.1%と最も高い。次いで7~9月が29.9%、10~12月は20.5%、1~3月が15.5%となっている。生まれた月の遅い選手は徐々に野球から離れていくため、自然な流れといえる。

 

しかし、プロに入ると立場が逆転する。首位打者や最多勝など、プロ野球でタイトルを獲得する選手になる割合は1~3月生まれが最も高く、次いで9~12月生まれとなっている。年度の前半にあたる4~6月と7~9月生まれの割合は、いずれも1~3月生まれの6割程度にとどまっている。

 

この結果は、たとえ小、中学生で体が小さくてレギュラーになれなかったとしても、上のカテゴリーで成功する可能性があることを示している。勝亦さんは、研究結果が早く生まれた子どもにも遅く生まれた子どもにも有益だと考えている。

 

「成長が遅い子は決して小、中学生で自分の能力を判断しないこと。野球を続けていれば一気に力が伸びる時期が来る可能性があります。また、早熟な子は中学や高校で晩熟な子に追いつかれ、追い抜かれるかもしれないと準備をしておくこと。無用に焦る必要はありません。周りではなく過去の自分と比較することをお勧めします」

サッカーW杯カタール大会の会場ルサイク・アイコニック・スタジアム

■日本サッカー界の中心選手 早生まれが多い傾向

早生まれがプロで活躍する傾向は野球だけではない。例えばサッカーでは、昨年開催されたワールドカップ・カタール大会の日本代表メンバー26人のうち、生まれ月を3か月ずつ区切ると、1~3月の早生まれは8人で最多となっている。

 

日本サッカー界をけん引してきた三浦知良選手、中田英寿さん、香川真司選手や、国際Aマッチ最多出場の遠藤保仁選手や主将として最多出場の長谷部誠選手は全員が早生まれだ。3月27日生まれの元日本代表・内田篤人さんは静岡市にある清水東高校1年生の時に、日本サッカー協会が企画した「早生まれ選抜」で才能を見出された。

 

勝亦さんは「早生まれの選手は子どもの頃、どのようにすれば早熟な同級生に勝てるのか考えたり、向上心や負けたくない気持ちが強かったりするのかもしれません」と話す。成長期は全ての子どもに訪れる。小、中学生で体が小さく、ライバルに勝てないからといってあきらめる必要はない。

 

(間 淳/Jun Aida

関連記事