2023/03/08
深刻な野球の競技人口減少 大阪の名門クラブ監督が静岡で示した部員獲得のヒント
■筒香嘉智、森友哉輩出 堺ビッグボーイズの監督が掛川市で講演
野球の競技人口減少に歯止めがかからない。静岡県も例外ではなく、メンバーが足りずにチームが減っている地域も少なくない。そんな中、大阪府にある「堺ビッグボーイズ」は小、中学生で180人の選手が所属している。中学部の監督を務める阪長友仁さんが静岡県掛川市で講演し、選手が集まる理由を明かした。
堺ビッグボーイズは野球ファンには知られている中学硬式野球の名門クラブだ。全国大会優勝経験があり、米国でプレーしている筒香嘉智外野手やオリックスの森友哉捕手らプロ野球選手も輩出している。
現在、チームには小学部と中学部を合わせて180人の選手が所属している。指導が行き届かない可能性を考慮し、学年によっては募集を止めているほどの人気。野球の競技人口減少とは無縁の状況といえる。
プロを夢見る選手たちは強豪チームを希望するケースが多い。だが、プロを目指す選手だけで180人の大所帯にはならない。選手や保護者に支持される理由は、チームの強さや伝統だけではない。
怒声罵声が当たり前だった時代は、堺ビッグボーイズも選手を厳しく指導していた。しかし、行き過ぎた勝利至上主義や長時間練習に疑問を抱き、2009年に方針を大転換。怒声罵声を一切辞めて、選手の自主性を伸ばす考え方に変えた。2014年から監督を務めている阪長さんは、こう話す。
「2009年より前も入部希望者は多かったのですが、チームを離れる選手も多かったと聞いています。今は辞める選手が減りました。高校でも野球を続ける選手も以前より増えています。」
■他チームに勝る指導者の数と質 勉強との両立もサポート
チームの大きな特徴は指導者の数と質にある。指導者は11人おり、社会人野球の名門で選手やコーチを務めた指導者ら、知識や経験が豊富。阪長さんは新潟明訓時代に甲子園に出場して立教大学まで野球を続けた。大学卒業後はドミニカ共和国など海外で野球を学んだり、指導したりしてきた。選手の父親が指導者を務める、いわゆるパパコーチはいない。
指導者はバッテリーや内野守備といった担当と学年別の担当、縦と横の軸で選手をサポートし、指導者同士で情報共有しているところもチームの特色。指導者間で定期的にミーティングもしている。阪長さんは「指導者がお互いをリスペクトしながら、気になったところは遠慮せずに指摘し合うようにしています。指導者が同じ方向を見てチームを良くする意識がないと、選手は困惑してしまいます」と説明する。
もう1つの特徴が、チームに所属する中学生を対象にした「学習塾」。希望者は月謝を支払えば、専門の講師による個別や集団授業を受けられる。1対1の個別は週1回、1回1時間で月1万500円。集団授業なら1教科5000円と相場よりかなり安い。国語、数学、英語、理科、社会の5教科に対応している。
この塾は知識を詰め込む勉強ではなく、「なぜ?」を意識して自ら考えて行動する力を育むことを目的としている。野球だけではない付加価値の提供も、子どもや保護者に支持される要因となっている。
たとえ強豪チームに入っても、プロになれる選手はごくわずかしかいない。大半の選手は、どこかで区切りをつけて野球以外の道へ進む。だからこそ、どんな大人から指導を受けるのか、何を学ぶのかがチームや指導者に問われている。
(SHIZUOKA Life編集部)