2023/04/26
体感型動物園iZoo 白輪剛史園長の連載スタート 爬虫類人生の幕開けとぶれない原点
■小学3年生のXmas サンタへの願いは「上部フィルター」
今や静岡県内だけではなく、全国でも動物の専門家として知られている。静岡ライフでは、河津町の体感型動物園「iZoo(イズー)」などを運営する白輪剛史園長の考え方や生き方に迫る連載をスタート。第1回のテーマは爬虫類人生の原点となっている小学生時代。当時の経験の延長線上に今がある。
物心がついた時から、私は爬虫類が好きでした。最初に飼ったのは、幼稚園の頃のミドリガメです。そこから、近所にいたトカゲやヘビ、カエルを捕まえてペットにしていました。
子どもの頃から、周りからは「変わっている」と言われていました。他の子どもたちが熱中していたゲームやスポーツ、テレビなどには全く興味がなく、食事と睡眠以外は生き物に時間を使う子どもでした。
小学3年生の時、サンタクロースにお願いしたのは熱帯魚を飼うための上部フィルターでした。サンタに願いが通じてうれしかったですね。
■小学生でトカゲのふ化成功 「iZooでの繁殖も同じ」
生き物に関しては、小学生の時点で大人より知識が豊富でした。自宅では爬虫類のほかに、ジュウシマツやインコも飼っていました。ある日、トカゲを飼っている水槽の中に鳥のエサを撒いたら草が生えてきました。
水を与えていると、次第に草むらのようになっていきました。ただ、何かが違うと思い、植物に水をあげるのをやめました。すると、茶色く枯れていきました。自然の草むらに近づいたわけです。
茶色く枯れた草むらはトカゲの隠れ家となり、卵を産むようになりました。緑色の植物が生えている水槽は自然のように見えますが、生き物にとっては不自然な世界。やっぱり、本来の自然をつくらないといけないと、小学4年生の時に感じました。
今、iZooで取り組んでいる生き物の繁殖も、小学生の頃にやっていたことと同じです。よく繁殖するコツを尋ねられますが、自然の環境をつくるだけ。雄と雌に条件を整えた場所さえ用意すれば、雌は卵を産んで、ふ化するんです。器具を使って人工授精させているわけではありませんから。
子どもの頃から生き物にだけ時間を使ってきたので、他の人とは比較できないほど場数を踏んできました。他に何もしていないので、負けるはずがありません。原点はぶれていません。
■子どもの質問には全て回答 原点は小学生時代に知った喜び
小学3、4年生の頃は、ペットショップに300円でアフリカツメガエルという一生を水中で生活するカエルが売られていました。それが大好きで飼っていたのですが、図鑑で調べても雌雄の判別方法が分かりませんでした。
そこで、愛読していた図鑑の後ろにリストで載っていた全国の動物園や水族館全てに「アフリカツメガエルの雄と雌の見分け方を教えてください」と手紙を送りました。その中で、秋田県の男鹿水族館と、大阪府にあったみさき公園動物園・水族館だけが返信をくれたんです。
2か所とも、同じ図鑑のコピーに一言手紙を添えて送ってくれました。おそらく当時の動物園に出回っていた図鑑だったのだと思います。あの時は、本当にうれしかったです。
大人が子どもと向き合ってくれたという喜びが、今の仕事にもつながっています。iZooなどで子どもから質問を受けたら全て答えるようにしているのは、自分が子どもの頃にしてもらった感動があったからです。
私が子どもの頃は、インターネットで簡単に情報を得られる時代ではありませんでした。今のように情報があふれていないので、図書館に行って調べたり、人と話したりして、知識を増やしていました。
■価値ある情報の入手がカギ 成功する方法は不変
便利な世の中に慣れている人は、昔の方が情報へのアクセスは悪かったと否定的に捉えがちです。でも、それは違います。アクセスが悪いのは周りの人も同じ条件なので、自分が知った情報を他人が得るのは難しいということです。それだけ、情報の価値が高くなります。
足で稼いだ情報は確度が高く、1つ1つの情報や知識を活用できました。それに、与えられた条件の中で価値の高い情報を得られた人が何事でも成功する可能性が高くなるのは、どの時代も同じだと思います。
今の時代も、インターネットで簡単に検索できない情報を手にできるか、他人が持っている情報の上を行けるかが重要です。昔も今も成功する方法は変わっていません。
<プロフィール>
白輪剛史(しらわ・つよし)。1969年生まれ、静岡市出身。静岡農業高校卒業。幼少期から爬虫類に興味を持ち、1995年に動物卸商「有限会社レップジャパン」を設立。2002年から国内最大級の爬虫類イベント「ジャパンレプタイルズショ―」を開催。2012年に体感型動物園iZooをオープンして園長に就任。