2023/05/14
「わがまま尊重してくれた」爬虫類の道で成功した“異端児”が感謝 高校時代の恩師
■iZoo白輪剛史園長 高校生で生き物の“自営業”
河津町の体感型動物園「iZoo」を運営する白輪剛史園長は小学生の時、すでに異端児と言われていた。前回の連載では高校生の頃に自営でお金を稼いでビジネスのベースを確立したエピソードを明かしたが、高校時代の恩師の存在なくして、爬虫類研究の第一人者となった今は語れないという。
領収書の書き方を覚えたのは、高校1年の時でした。通っていた静岡農業高校ではアルバイトが禁止されていたので、自分で生き物を売り買いしていました。どこかの会社に所属して雇われているわけではないから、自営なら問題ないという発想です。
生き物の卸売を始めたばかりの頃、お客さんのところに集金へ行ったら「領収書は?領収書を持ってこないと駄目だよ」と言われました。全く分かっていなかったので、近くの文房具屋に行って、店のおばあちゃんに「領収書をください。書き方も教えてください」とお願いしました。
金額が3万円を超えると収入印紙が必要ということも教わり、領収書と一緒に収入印紙も購入しました。初めて領収書を切り、そこから商売はスタートしました。
■担任が高校卒業に必要な出席日数計算 長所伸ばす教育
生き物の配達は高校の帰りにも行っていたので、学校のロッカーではニシキヘビやサソリを飼っていました。いつしか私の行動は校内で噂になり、職員室に呼び出されました。担任から「アルマジロを飼っていると噂になっているが本当なのか?」と聞かれました。アルマジロは飼っていなかったので「飼っていません」と答えましたが、何かしらの生き物を飼育しているのはバレていました。
大半の教師であれば「今後、学校には生き物を持ってくるな」となりますが、その担任は「空いている教室があるから、そこで生き物を飼えばいい」と言ってくれました。高校3年になった頃は、生き物を飼っている教室にばかり行って、授業にはあまり行っていませんでした。
動物の卸売の方も忙しくなっていたので、授業の出席率はどんどん低くなりました。すると、担任は「出席率が5分の1を切ると補習、3分の1を切ると留年になる」と教えてくれました。そして、「俺がスケジュールを組むから、留年しないように授業に出席しないか」と提案までしてくれました。授業の出席は卒業に必要なギリギリの日数で構わないので、好きなことに没頭して良いと、こちらのわがままを尊重してくれたんです。
その担任がいなかったら、間違いなく今はありません。最終的には、静岡県内の高校で校長を務めて退職されたと聞いています。
■高校受験の面接で観葉植物の増やし方熱弁
こういう話をすると、「今の時代ではあり得ない」と言われますが、当時でも稀も稀。それくらい、当時から私は変わり者と言われていましたし、担任が興味のある分野を伸ばしてくれたと思っています。
私は学校や授業が嫌いだったわけではありません。そもそも、農業高校に進学したのは、家で飼っていた爬虫類の水槽に植え込むための観葉植物を育てていて、植物にも関心があったからです。高校の面接で観葉植物の増やし方を延々と話し、面接官が大笑いしていました。それが高校合格につながったと思っています。
高校でも植物に関する授業はおもしろかったのですが、他の授業には興味を持てませんでした。興味がないことに時間を使うよりも、自分の好きなことをやった方が有意義だと感じたわけです。おそらく、他の人とは考え方のスタート段階がずれているのだと思います。そのままの考え方で今に至っています。
<プロフィール>
白輪剛史(しらわ・つよし)。1969年生まれ、静岡市出身。静岡農業高校卒業。幼少期から爬虫類に興味を持ち、1995年に動物卸商「有限会社レップジャパン」を設立。2002年から国内最大級の爬虫類イベント「ジャパンレプタイルズショ―」を開催。2012年に体感型動物園iZooをオープンして園長に就任。