2023/05/20
静岡県への移住者が過去最多 1.6倍の静岡市が悲観する2つのワケ「打つ手がない」
■昨年度の移住者2634人 前年度から41%増加
昨年度、静岡県外から県内への移住者は2634人だった。前年度から41%増加し、県内18市町で過去最多となった。静岡市でも1.6倍に移住者は増えたが、「予想より伸びていない」、「課題は多い」と話す関係者は少なくない。
静岡県企画政策課によると、静岡県に昨年度移住した人の数は前年度から766人増えて2634件だった。移住相談件数は1万3496件で1855件増加した。いずれも、過去最多となった。
移住した世帯主の年代は20代が34.3%と最も高く、30代の32.0%、40代の17.3と続いた。20代から40代で全体の83.6%を占めたことに、川勝平太知事は定例会見で「各市町のきめ細やかな支援の成果が出た」と話している。
県内35市町の中で前年より移住者が増えたのは18市町だった。最も多かったのは浜松市の390人(+262人)。次いで静岡市255人(+97人)、沼津市253人(+208人)、富士市241人(+79人)となっている。
移住者を増やす取り組みは、各市町で進められている。前年度から3倍以上に増えた浜松市は、移住コーディネーターによる相談体制の強化や住宅助成などの施策を打っている。5.6倍と大幅に増えた沼津市は、官民連携による移住相談体制の強化やインターネット広告の拡充を進めている。
■静岡市の移住者は1.6倍 相談件数は県内断トツ
静岡市は前年度の158人から255人に移住者が増えた。1.6倍増は数字的には順調に見えるが、市の関係者の表情は厳しい。その理由を説明する。
「人口を考えれば、3位の沼津市や4位の富士市にもっと差をつけなければいけませんし、伸び率も上位の自治体と比べて鈍いです。数字を前向きに捉えられないのは相談件数に対する移住者数の少なさと、歯止めがかからない静岡市外への流出者です」
昨年度、静岡市への移住相談は2431件と県内で最も多く、浜松市の1668件を大きく上回った。沼津市や富士市など県東部14市町の相談件数を全て合わせた数よりも多い。しかし、2431件の相談に対して、実際に移住した人数は255人。相談者の9.5人に1人が移住した計算となる。
一方、浜松市は1668件の相談で390人が移住と、相談者の4.3人に1人が移住している。県東部全体は相談件数が2278件で移住者は1056人だった。静岡市の関係者は、こう話す。
「静岡市は新幹線が停車し、東名と新東名があるので交通の利便性が高いです。東京にも愛知にも近いため移住に興味を示す人は多いです。しかし、土地やマンションの価格が首都圏と同じ水準と予想以上に高く、その割に中心市街地にはにぎわいがないという指摘が少なくありません。また、転職を考えている人からは、堅い仕事ばかりで働きたい企業がないという声もあります」
■「打つ手がない」 静岡市からの流出歯止めかからず…
もう1つの課題は、静岡市から流出する人の数だ。昨年、静岡県外に転出した人数は県内へ転入した人数より4658人多かった。中でも、静岡市は転出超過が1379人と県内最多となった。
静岡県は首都圏の大学に進学しやすい立地とはいえ、静岡市の関係者は「転出超過に歯止めがかかりません。UターンやIターンの対策は長年講じていますが、状況を変えるまでには至らず、現状は打つ手がありません」と声を落とす。
移住相談件数や移住者の増加は、静岡市の支援の成果が表れているといえる。ただ、人口減少を食い止める道は険しい。
(SHIZUOKA Life編集部)