2023/06/03
ロングセラーの秘密は「おいしすぎない味」 累計販売2億個 静岡で最も有名なパン
■「のっぽパン」45周年 期間限定で復刻版販売
静岡県のご当地パンとしての地位を確立した。沼津市でパンの製造・販売をしているバンデロールの看板商品「のっぽパン」。販売開始から45周年を迎え、累計売上は2億個に達した。長年愛される理由には「おいしすぎない味」の継承と、現状に満足しない進化がある。
34センチの長細いパンと、愛らしいキリンのキャラクターがデザインされたパッケージ。一度目にすると記憶に残る「のっぽパン」は発売から45周年を迎えた。4月からは地元・沼津市の100周年とコラボした復刻版を7月末までの期間限定で販売している。パッケージは発売当時の懐かしさを残しながら現代風にアレンジ。当時の社名・沼津ベーカリーの通称「NB」のロゴも入っている。
のっぽパンは現在、東部地域を中心に県内全域のスーパーやコンビニなどに並んでいる。店舗数は限られるが東京、神奈川、千葉、埼玉でも販売。1日4000個を製造している。なぜ、45年も愛されているのか。長年のっぽパンの製造に携わった取締役管理本部長の野田歩さんは、意外な理由を明かす。
「おいしすぎないところが良いのだと思います。感動するほどではない普通のおいしさ。長く愛される定番になるには、おいしすぎないことが大事なポイントです。開き直りのように感じられるかもしれませんが」
■45年変わらないクリーム 生地は時代で変化
のっぽパンの味の特徴といえば、パンの中に入っているクリーム。練乳風味のバタークリームはシンプルで飽きがこない。販売開始から45年前経った今も、馴染みの味は変えていないという。一方、パン生地は何度かマイナーチェンジしている。消費者の好みが時代で変化し、当初よりも長い時間パンの柔らかさを維持する工夫を凝らしている。
こうした伝統を守りながら、進化も恐れない姿勢がロングセラーの理由と言える。近年はのっぽパンの固定観念を覆す挑戦や地元食材とのコラボに力を入れている。例えば甘いイメージのあるのっぽパンに、富士宮焼きそばや黒はんぺんなどを挟む「サンドウィッチのっぽパン」をイベントなどで販売している。野田さんは言う。
「行動を起こさないと忘れられてしまうので、のっぽパンの可能性を広げる取り組みを続けています。地元企業とのコラボで1+1が3になるように地域の力にもなっていきたいと考えています」
■のっぽパンの可能性追求 地元企業とコラボ100種類
サンドウィッチのっぽパンの評判は上々で、ボリュームがあるので数人でシェアできるところも人気となっている。静岡市で毎年開催されている大道芸ワールドカップなど県内各地のイベントに出店し、行列ができることも多い。
イベントや期間限定を含めると、今までに発売したのっぽパンの種類は100を超える。野田さんは「これだけ1つの商品で展開できるのは、のっぽパンならではです。中には上手くいかなかったものもありますが、おもしろい挑戦をしていると話題になりました。長く愛されるためにはどうすればいいのか常に考えています。お客さまに楽しんでもらう遊び心は忘れたくないですね」と話す。
見た目の長さと同じように静岡県民に長く愛されているのっぽパンには、伝統と進化が詰まっている。新たな可能性を探し続けて45年。まだ、通過点に過ぎない。
(間 淳/Jun Aida)