2023/06/29
キリンのキャラクターも人気 静岡のご当地パン「のっぽパン」が34センチのワケ
■限界まで長くつくった結果が34センチ 名前は別の候補も
静岡県で最も有名なパンと言えば、沼津市に本社を置くバンデロールの「のっぽパン」で異論はないだろう。パンの長さが34センチの理由、別の商品名になっていた可能性など、のっぽパンには秘話がある。パッケージにデザインされているキリンのキャラクターは今や、パンのカテゴリーを超える人気となっている。
のっぽパンの最大の特徴は、ネーミング通りの細長い形状。その長さは34センチもある。30センチでも35センチでもない切りの悪い長さには理由があった。バンデロールの取締役管理本部長・野田歩さんが明かす。
「パンを焼く天版は規格が決まっており、長さは36センチです。ふちを残して目いっぱい伸ばしてパンをつくると34センチになります。のっぽパンは意図的に34センチにしているわけではなく、限界まで長くつくった結果です」
見た目とぴったりな商品名の「のっぽパン」。親しみやすい名前もロングセラーの理由だが、別の候補もあったという。長年のっぽパンの製造にも携わってきた野田さんは「諸説ありますが、長いパンなのでスリムくんという候補もありました。その中で、のっぽパンが採用されました」と説明する。
もし、スリムくんというネーミングだったら長年愛されていたかは分からない。ただ、のっぽパンの大きな特徴となっているキリンのキャラクターとの相性は今ほど良くなかったかもしれない。のっぽパンは発売当初から、袋入りのパンでは珍しくキャラクターをデザインしている。
■キリンのキャラも地位確立 バッグやタオルなどグッズも人気
のっぽパンは定番のクリームに加えて、丹那牛乳や静岡メロンといった地元の名産とコラボした味も多い。味によってキリンの表情や色も変えている。そして、キリンはキャラクターとしての地位を確立し、活躍の場をパン以外にも広げている。
ここ数年はファンの要望を受け、キリンをデザインしたTシャツやトートバッグ、タオルやマスクなど、グッズの販売にも力を入れている。野田さんは「のっぽパンは細長い見た目、名前、キリンのキャラクターと3つの要素が上手く合わさっているところに長年愛されている理由があると思っています。グッズにはパンのように消費期限がないので、今後も挑戦していきたいと思っています」と話す。
のっぽパンが誕生したのは1978年。パンの常識に捉われず、45年経っても新たな可能性を模索してファン拡大を目指している。
(間 淳/Jun Aida)