2023/07/12
初体験でも楽しめる eスポーツで高齢者の居場所づくり 島田市が本格的に事業スタート
■6月下旬に体験会 参加者は全員初めてのゲーム
ゲームを通じて高齢者の居場所やつながりをつくる。静岡県島田市がeスポーツ事業を本格的にスタートした。高齢者向けの体験会や出前講座、サポーター養成講座を定期的に開催していく。
6月下旬、島田市にある保健福祉センターはなみずきでは、音楽や映像に合わせて高齢者が体を動かしていた。島田市包括ケア推進課が企画したeスポーツ体験会。参加者7人は全員、ゲーム初体験だった。
eスポーツはエレクトロニック・スポーツの略称で、コンピューターゲームでの対戦をスポーツとして捉えている。ここ数年、若年層を中心に日本でも一気に広がり、高額な賞金が設けられた大会が開催されたり、高校にeスポーツ部ができたりしている。
今回、島田市がeスポーツ体験会で使用したゲームはバンダイナムコが発売する「太鼓の達人 ドンダフルフェスティブル」と「GO VACATION」の2つ。静岡県eスポーツ連合から招いた講師が、eスポーツの概要やゲームのやり方を参加者に説明した。体験会後のアンケートでは、「楽しかった」、「またやってみたい」といった参加者からの声が多かったという。
■eスポーツで交流 出前講座、サポーター養成講座も開催
島田市は今年2月にもeスポーツの体験会を開催している。7月からは毎月1回、定期的に実施する。その他にも、市の職員がゲーム機器を持ち込んで希望の場所まで訪れる「出前講座」や、機器の設置方法やゲームの基本操作を学んでeスポーツ初心者を手助けする「サポーター養成講座」も行っていく。
島田市が高齢者を対象としたeスポーツに力を入れるのは、高齢者の孤立を防ぐ目的がある。年齢を重ねると人や社会とのつながりが薄くなる傾向にあり、特に仕事を退職した男性は外出や交流が大幅に減る人が多い。
市の担当者は「市が開催するイベントの参加者は8割くらいが女性です。eスポーツは競争する要素があるので、男性にも興味を持ってもらいやすいと思います」と話す。実際、6月のイベントでは参加者7人のうち、3人が男性だった。
市はeスポーツを通じて、高齢者が地域コミュニティに参加するきっかけをつくる狙いがある。また、eスポーツには別の効果も期待できるという。
■体動かして健康促進 デジタルの苦手意識も軽減
「70代、80代と年齢を重ねると、リアルなスポーツはハードルが高くなります。eスポーツは楽しみながら体を動かせる良さがあります。また、親しみやすいゲームをきっかけにしてデジタル機器に触れる機会を増やし、デジタルへの苦手意識を軽減できればと思っています」
島田市は2019年度にデジタル化を加速する変革宣言をしている。これまで紙で流していた市の情報をインターネット経由に移行している。eスポーツ体験会も、LINEを使って案内している。
高齢化が進み、一人暮らしの高齢者は増えている。孤立を防ぎ、地域とのつながりを生むためにeスポーツは有効な手段の1つとなる。
(間 淳/Jun Aida)