2023/07/15
J2後半戦突入 エスパルス・ジュビロ・MYFCの中間査定 J1昇格へのカギは
■“補強禁止”で異例の開幕 ジュビロに負けない強さ
22チームによる争いが繰り広げられている明治安田生命J2リーグ。すでに25試合を消化し、長丁場と言われる過酷なサッカーJ2の戦いも後半戦に突入した。
静岡県民にとって良くも悪くも、今シーズンほどJ2への関心が高い年はないだろう。J1から降格した清水エスパルスとジュビロ磐田、それにJ3から昇格した藤枝MYFCが揃い踏み。今年はJ2に静岡県勢3クラブが参戦する史上初のシーズンになっているからだ。
ジュビロはFWファビアンゴンザレス選手の獲得をめぐり、FIFAから補強禁止処分を受けて今シーズンを迎えた。カタールW杯日本代表で森保一監督の参謀役を担った横内昭展監督を新指揮官として招へいしたが、J2降格が決まったチームは補強ができずに開幕を迎える異例の事態。名門の立て直しは極めて難しいミッションに思われた。
実際に開幕直後はつまずいた。ホームで岡山を迎えた開幕戦を2対3で落とすと、清水との静岡ダービーとなった第5節までの戦績は1勝2分け2敗。それでも4月以降、カップ戦と並行した過密日程を消化する中、様々な選手を起用しながらチームの状態は徐々に上向きになった。
6月3日のホーム秋田戦で2対0の勝利を収めると、そこから直近25節のアウェイ・山形戦まで5勝2分けとリーグ戦7戦無敗。今シーズン初めて順位を3位まで上げ、自動昇格圏の2位・東京Vに勝ち点で並んだ。3対1で山形を下した試合後、横内監督は同点に追いつかれた後のチームの戦いぶりを評価した上で、昇格争いに向けて「1試合1試合勝点を積み上げていくに尽きる。勝点1のときもあるとは思うが、積み上げ続けることが重要」と締めくくった。
ボールを保持する攻撃的なスタイルを指向する新指揮官の狙いが浸透し、機能し始めているとも言えるジュビロ。今の負けない強さを後半戦も維持できれば、自ずと1年でのJ1復帰も見えてくる。
■“毎年恒例”の監督交代 開幕ダッシュ失敗からエスパルス巻き返し
日本代表の守護神に、去年のJ1得点王…。超J2級とも言われた戦力を擁するエスパルスだったが、またもシーズン途中での監督交代劇に見舞われた。ましてや今年はJ1から降格した監督をそのまま指揮官に据えて、開幕7試合勝利なし。プレシーズンを全て棒に振ったと言っても過言ではないだろう。
後任は今シーズンからヘッドコーチとしてチームに加わっていた秋葉忠宏監督。他クラブではJ2を戦った経験もあるだけに、監督交代を見据えているのではないかの見方もあったが、シーズン序盤でそれが現実となった。
一方で、監督交代直後に“ブースト”がかかったように、調子が一時的に上向くのも近年のエスパルスではもはやお決まりだ。今シーズンも秋葉監督が指揮を執るようになってからはリーグ戦8試合負けなし。首位・町田との一戦を含むアウェイ2連戦で連敗を喫すると、そこからは勝ちきれない試合が散見されるも、直近25節を終えて勝点41でプレーオフ圏内の6位につけている。納得できる順位ではないものの、J2屈指の戦力層の厚さをもって後半戦の巻き返しに期待したい。
キーマンは秋葉監督就任後、チームに欠かせない存在となった元日本代表MF乾貴士で異論ないだろう。前半戦は乾不在時の穴埋めに苦労したが、7月13日に発表されたU-22日本代表MF鈴木唯人のフランスからのレンタルバックでめどが立ちそうだ。タイプこそ異なるが、鈴木唯人の決定力の高さや個で打開できるドリブルは秋葉エスパルスの新たなオプションになり得るだろう。
■J2でも「超攻撃的サッカー」貫く MYFC 三国決戦は苦杯
クラブ史上初となるJ2に挑んでいる藤枝MYFC。直近25節を終えて勝点35で、22クラブ中9位につけている。参考までに、同じ昇格組のいわきFCは勝点27の19位である。
須藤大輔監督の元、昨シーズンから超攻撃的サッカーを掲げるチームは開幕2連勝でスタートダッシュに成功。春先の連戦は浮き沈みのある結果となったが、ここまでチームを牽引しているのが12ゴールを記録し、J2得点ランキング3位につけるFW・渡邉りょうだ。
チームの強みは10番・横山暁之のチャンスメイクと、ウイングバックの久保藤次郎を起点とした右サイドからの攻撃だ。特に久保の積極的な攻撃参加は周囲との連携はもちろん、劣勢の状況においても個で打開を図れるという点で今のチームに欠かせない。
次節26節では、アウェイでジュビロとの対戦。史上初めてJ2に静岡県勢3クラブがそろった今シーズン、県勢同士の戦いは「静岡三国決戦」と銘打たれている。その三国決戦の前半戦、磐田と清水のどちらにも敗れた藤枝は、超攻撃的サッカーで磐田を下し、後半戦に弾みをつけられるだろうか。注目はエース・渡邉りょう。前回の磐田戦では退場処分となっただけに、今節は自らのゴールで雪辱を期す一戦となる。
(SHIZUOKA Life編集)