2023/09/11
静岡県の学校でも給食停止 事業者63%が業績悪化 値上げが難しい特殊な事情とは
■給食事業の競争激化 公的機関の入札事業は価格転嫁に難しさ
全国で学校給食を提供する広島県の企業「ホーユー」が事業停止の状態に陥った問題は、静岡県にも影響が及んでいる。県内7つの施設が業務委託しており、給食が届かなくなっている。給食の事業者は6割以上が業績悪化という厳しい現状を伝える報告もあり、今後同様の問題が起こる可能性も指摘されている。背景には、物価高騰を価格に反映しづらい特殊な事情がある。
広島市に本社を置く「ホーユー」は全国で約150の施設に給食などを提供している。しかし、物価と人件費の高騰で経営難となり、半数ほどの施設で食事の提供を停止している。静岡県内でも特別支援学校や定時制高校など、7つの施設でホーユーに業務委託しており、給食の提供が停まっている。
学校給食は民間に委託する自治体が増えており、需要自体は拡大傾向が続いている。ただ、給食を提供する事業者が置かれている状況は厳しい。民間の調査会社・帝国データバンクによると、給食事業者374社のうち、昨年度の業績が赤字だったのは34.0%。減益の29.1%を合わせると63.1%は業績悪化したと回答している。
業績悪化の要因となっているのが物価高騰。2022年以降に累計で5万品目を超える食品が値上げされている。しかし、価格転嫁ができない事情があるという。
最近は大手飲食チェーン店や宅配事業者なども給食事業へ参入し、価格競争が激化している。さらに、学校のように公的機関の入札事業は価格競争に陥りやすい傾向にある。食材費や人件費が想定より膨らんだとしても、「契約期間中の価格改定は非常に困難」、「値上げは数年に一度など制限がある」といった声も出ている。結果的に採算割れして業績が悪化する事業者が増加している。
■100円のコストアップ→価格転嫁の平均27.1円
調査では、コスト上昇分を全て価格に転嫁できたと答えた給食事業者は1社もなかった。「全く価格転嫁できていない」と回答した事業者は15%を占めた。価格転嫁は「20%未満」が35%、「50%未満」は15%となっている。100円コストが上がった際に価格転嫁した金額の平均は27.1円で、全産業の平均43.6円を大幅に下回った。
急激に進んだ物価高に対応するため、補正予算などで給食事業者へのコスト補填を検討、実施する自治会もある。ただ、「どのような根拠でコストアップ分を計算すれば良いか分からない」という声もあるという。帝国データバンクは「給食事業者と行政の双方でコスト上昇と価格転嫁のバランスを決める場が求められる」としている。
(SHIZUOKA Life編集部)