2023/09/30
なぜ爬虫類は嫌われる? 専門家が理由を分析 最近はSNSの普及で「地位向上」
■iZooの白輪園長が主張 爬虫類が嫌われる理由は「同調意識」
爬虫類という言葉を聞くだけで拒否反応を示す人は少なくない。それでも、最近は地位が向上しているという。爬虫類の専門家で、河津町の体感型動物園「iZoo」を運営する白輪剛史園長の連載、今回のテーマは爬虫類の立ち位置。なぜ、爬虫類を嫌う人が多いのか。白輪園長が考える爬虫類の魅力とは。
爬虫類は、犬や猫、キリンやパンダのようには愛されていません。苦手な人は多いと思います。なぜなのか。サルは生まれた時からヘビのような長いものが嫌いです。人間はサルから進化しているので、本能的に爬虫類が怖いのかもしれません。
ただ、それよりも大きな理由と感じるのは、周りへの同調意識です。子どもの頃は爬虫類に触っていたのに、大人になって触れなくなったという人は少なくありません。子どもは大人よりも、自分の感情に素直に行動します。一方、大人は知識が増えて周りの目を気にするようになるので、恐怖心が沸いたり、周りに合わせてキャーと叫ばないといけない雰囲気を察したりします。
その中で、最近は爬虫類への見方が変化しています。要因はSNSの普及です。爬虫類を愛でる女性の投稿が増えたことで、爬虫類をかわいい、かっこいいという感情は不自然ではないと認識されるようになってきました。自分の考え方や気持ちを誰もが発信できる時代になって、爬虫類への先入観や偏見が減り、少しは地位が向上していると感じています。
だからといって、爬虫類を好きな人は多数派ではありません。爬虫類に携わる自分たちの活動がまだまだ足りない部分もありますし、誰もが好きになる必要はないと思っています。食わず嫌いで、実際に爬虫類を見たら、そこまで嫌わなくても良いと感じてもらえるだけで十分。嫌いと言われてしまうと、その先に進めませんから。
■ヘビは嫌われ者 カメは“何もしていないのに”努力家
好きになってもらえれば最高ですが、生理的に受け付けない場合は仕方ありません。それが爬虫類の立ち位置だと思っています。
爬虫類は歴史的に忌み嫌われてきました。特にヘビはヤマタノオロチの神話が日本にありますし、海外ではアダムとイヴに禁断の果実を食べるようにそそのかしたのは悪魔の化身であるヘビとされています。ヘビが良いイメージで描かれることは少ないです。ヘビに足が生えるとトカゲになります。ワニも危険な生き物という印象が強いです。
日本人に珍しく好印象を持たれている爬虫類はカメです。浦島太郎やウサギとカメなどの物語で描かれているカメ、さらに鶴は千年、カメは万年という言葉もあります。カメは努力家、縁起が良い生き物のイメージができています。
カメは特別な努力をしているわけではないのに努力家や長寿のシンボルと愛され、同じ爬虫類のヘビやトカゲは何もしていないのに嫌われています。印象が先行して好き嫌いが決まってしまうのが爬虫類と言えます。
■爬虫類は1万種類の集合体 飼育を通じて世界を知る
子どもの頃から爬虫類が好きで、爬虫類の仕事をしている立場からすると、爬虫類の魅力の1つは北極と南極を除いてほぼ世界中に生息しているところにあります。森林から高山まで、地中、海中、空と様々な環境を生き抜いてきたからこそ多様性が生まれています。爬虫類は9000種類から1万種類に及ぶ集合体です。
これだけ長く爬虫類に携わってきても、未知な部分はたくさんあります。自分が見たことのない爬虫類は、まだ世界に何千種類もいます。1つずつ目にする機会が楽しみです。
ペットとして飼われる爬虫類には飼い主を癒す効果もありますし、飼育を通じて生態に関する知識も培われます。飼っている爬虫類は、どんなところに生息しているのか、より快適な環境で育てるにはどうしたら良いのか、その国や地域について調べるきっかけとなります。爬虫類の専門家として、世界のあらゆるところにいる爬虫類を紹介し、日本以外の国にも興味を持つ機会をつくっていきたいと思っています。
<プロフィール>
白輪剛史(しらわ・つよし)。1969年生まれ、静岡市出身。静岡農業高校卒業。幼少期から爬虫類に興味を持ち、1995年に動物卸商「有限会社レップジャパン」を設立。2002年から国内最大級の爬虫類イベント「ジャパンレプタイルズショ―」を開催。2012年に体感型動物園iZooをオープンして園長に就任。