2023/10/13
“菌扱い”のいじめ 加害児童の保護者に賠償命令 健康被害との因果関係は否定
■2000万円の損害賠償請求 静岡地裁は88万円の支払い判決
静岡市葵区にある千代田小学校で当時5年生だった男子生徒がいじめを受け、適応障害を発症したなどとして同級生や保護者、学校側などに2000万円余りの損害賠償を求めた裁判で、静岡地裁は同級生6人の保護者に88万円の支払いを命じた。男子生徒の名前に「菌」をつけて呼んだいじめを認定する一方、いじめと健康被害の因果関係は否定した。
12日の静岡地裁による判決では、2017年11月に当時小学5年生だった生徒に対し、名前に「菌」をつけて呼ぶ行為が継続的に行われたと認定された。原告側がいじめの中心的な存在だったと主張する7人のうち、6人の保護者に88万円の支払いが命じられた。児童に責任能力はなく、親権者が責任を負う形となった。
静岡地裁は「菌をつけて呼ぶ行為は原告のみを差別的に扱っている。児童間の遊びとして到底是認しえない」と指摘した。ただ、原告側が訴えていた暴行については認めず、担任が“菌扱い”に気付くのは難しかったと判断した。原告側は校長や担任、静岡市にも損賠賠償を求めていたが、請求は棄却された。
いじめを受けた男子生徒は判決後に記者会見を開き「悔しくて残念な気持ちでいっぱいです」と胸の内を明かした。裁判ではズボンとパンツを下ろされるいじめもあったと証言したが静岡地裁には認められず「何のために証言したのか。何のために、ここまで闘ってきたのか分かりません」と語った。
男子生徒は小学6年生の時に転校し、いじめを受けてから6年が経っているが、今も難聴や味覚障害が続いているという。判決では、いじめと健康被害の因果関係が認められず「いじめが原因で病気になりました。今回は敗北となってしまいましたが、完全に負けたわけではないので、納得いくまで闘いたいと思っています」と東京高裁に控訴する考えを示している。
(SHIZUOKA Life編集部)