2023/10/14
なぜ減らない?部活動指導者の暴言や体罰 静岡県の野球部とサッカー部でも発覚
■浜松湖南と常葉大橘で指導者が不適切な言動
静岡県の部活動で指導者の処分が続いている。日本学生野球協会は浜松県立浜松湖南高校の野球部監督を6か月間の謹慎処分にしたと発表した。静岡市の常葉大橘高校サッカー部ではコーチが解任された。
日本学生野球協会などによると、浜松湖南高校の野球部で顧問をしていた男性教諭は過去1年の間に、部員に対して「よくも、こんなクズばかりが集まったな」、「人間として魅力がない」などの暴言を吐いた。部員へのアンケートで明らかになったという。顧問は5月30日から6か月間の謹慎処分を受け、野球部の監督は別の教諭が務めている。
常葉大橘高校サッカー部では今年5月、20代の男性コーチが部員に「死ね」、「消えろ」などと暴言を浴びせた。部活を休んだ部員には罰走を命じていたという。校長から厳重注意されて10日間の指導停止処分を受けたにもかかわらず不適切な言動を改めなかったため、学校側はコーチを解任した。
■「今までの自分を否定」 方針転換できないワケ
静岡県に限らず、指導者の不適切な指導は後を絶たない。なぜ、パワハラや体罰の撲滅が社会的に叫ばれている中で暴言や暴力はなくならないのか。かつては怒声罵声で選手を指導していた野球関係者は、こう話す。
「方針を変えることは今までの自分を否定することにつながるので、受け入れられない指導者が少なくないのだと思います。それから、自分が指導して成功した選手は暴言や暴力による成果だと勘違いするケースもあります。少なくとも成功した選手は暴言や暴力がなくても今の立場に到達していますし、適切な指導を受けていれば今以上の力を発揮していた可能性が高いと思います」
この指導者はチームを何度も全国大会に導いていたが、選手を委縮させる言動が可能性を狭めていると気付いて怒声罵声や暴力を一切やめる指導へ転換した。グラウンドだけではなく私生活から人の良いところに目を向けるようにして、褒める指導で選手に接している。指導法を変えたことで選手たちにも変化が生まれ「質問される機会が増えましたし、自主的に練習する選手、練習の意図を考える選手が圧倒的に増えました」と語る。
競技を問わず、スポーツ界には暴言や暴力を容認する風潮が根強く残っている。処分を受けても時間が経つと現場に復帰し、同様の指導を繰り返すケースが少なくない。指導者に一時的なペナルティーを科すだけでは、問題の根本的な解決にはつながらない。
(SHIZUOKA Life編集部)