2023/10/29
「勉強や生活に支障がない髪形」 学校の校則見直しで髪を染める中学生増加
■ブラック校則を問題視 静岡市はガイドライン作成
ブラック校則に対する批判が社会的に高まり、校則を変更する学校が増えている。静岡県内でも服装や髪形に関する校則を生徒の判断に任せる学校が増加している。校則の見直しに賛成する意見がある一方、髪を染める児童や生徒を疑問視する声もある。
靴下や下着の色、スカートの長さや髪形などを極端に制限し、社会の常識とかけ離れている校則は「ブラック校則」と呼ばれている。人権や健康を奪うと問題視され、最近は校則を変更する学校が増えている。
静岡市では2021年に「校則の策定及び見直しに関するガイドライン」を作成した。このガイドラインでは、校則について次のように定義している。
「学校が教育目的を実現していく過程において、児童生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定められているもの。具体的には小学校では『生活の決まり』や『よい子の一日』、中学や高校では『校則』、『生徒心得』などを含む」
静岡市は校則が「児童生徒の成長や学校運営の安定において、一定程度の役割を果たしてきたと言える」とした上で、「昨今の一般社会において、価値観が多様化するとともに、人権尊重の観点から個人の指向も可能な限り認めていくべきという機運が高まっており、校則も見直しが求められる状況となっている」としている。見直しの在り方としては3つの点を示している。
①児童生徒に自己存在感を与えること
②共感的な人間関係を育成すること
③自己決定の場を与え、自己の可能性の開発を援助すること
■髪形のルール見直し “茶髪解禁”に保護者は賛否
校則の見直しでは「中学生らしい」といったあいまいな概念を避け、「社会通念に照らして合理的な理由が説明できる内容にする」としている。具体的には「男子の髪は耳にかからない長さ」、「うちわや日焼け止めは禁止」、「靴、靴下、肌着などは白一色とする」などの項目を校則から削除するよう学校側に求めている。
このガイドラインを受け、各学校は校則の見直しに乗り出した。その中で、頭髪の制限をなくした中学校は少なくない。校則の文言を「授業や学校生活に支障がない頭髪」といった表現で、事実上制限のない“頭髪自由”にした学校もある。
その結果、静岡市内の複数の中学校からは「髪を茶色に染める生徒が増えている」という声が上がっている。髪の色が何色であっても勉強や部活に影響はないため、校則を破ってはいない。これまでは黒い髪が“常識”とされていたが、校則の見直しで茶髪が“解禁”された形だ。子どもの髪形が自由になった理解し、息子や娘の髪を染める保護者もいるという。
これに対して、保護者の賛否は割れている。生まれつき髪が茶色っぽい児童や生徒がいることから「髪の色が黒に制限されているから、元々髪が茶色い子どもが教師に叱られたり、いじめにあったりする。髪の色を自由にすれば、問題は解決するのではないか」という声が上がる。また、「髪形も服装も制限し過ぎるから羽目を外す子どもが出てくる。大人も同じだが、髪を染めたことで勉強や仕事に影響はない」などの意見もある。
一方、「経験も知識も少ない子どもには一定のルールや制限が必要。大人と同じようにすべきではない」、「自由や自主性の考え方が誤解されている。校則の見直しは事実上、校則がなくなった状態になっている」といった声もあった。
学校関係者は「あいまいな概念を避けるように指示している行政のガイドラインが一番あいまいで抽象的。現場は困惑している」と指摘する。長年続いてきた校則を見直し、最善の方法にたどり着くまでには時間がかかるだろう。
(SHIZUOKA Life編集部)