2022/08/05
静岡県でもヤングケアラーの深刻さが浮き彫りに 学校欠席や進路変更する児童・生徒も
■県が初の実態調査 22人に1人が家族の世話をしていると回答
静岡県でも深刻な状況が明らかになった。県は小学5年生か高校3年生を対象に初めて実施した「ヤングケアラー」の調査結果を発表した。回答した22人に1人が「家族の世話をしている」と回答し、「学校に行きたくても行けない」、「進路変更を考えざるを得ない」と答えた子どもたちもいた。
ヤングケアラーに法令上の定義はないが、一般的に大人が担うと想定されている家族の介護や世話を日常的に行っている18歳未満の子どもを指す。必要な教育が受けられなかったり、行政などの支援が届かずに負担を背負い込んだりする問題が指摘されている。
静岡県でも昨年10月今年1月にかけて、初めて実態調査に乗り出した。学校を通じて県内の小学5年生から高校3年生、計25万6966人にアンケートを取り、9割を超える児童・生徒から回答があった。
県が公表した調査結果によると、「家族のケアをしている」と回答したのは1万782人。全体の4.6%で、約22人に1人の割合となる。ケアをしている児童・生徒の中には過重な負担ではない手伝いも含まれているが、「ケアをしている」と答えた子どもの4分の1にあたる2382人は「学校生活等への影響がある」としている。
中には「どうしても学校を遅刻・早退してしまう(184人)」、「進路の変更を考えざるを得ない、もしくは進路を変更した(155人)」、「学校に行きたくても行けない(98人)」といった深刻な回答もあった。
■ケアの頻度は「ほぼ毎日」が最多の41.8% 1日7時間以上の回答も
ケアの頻度を問う質問には、「ほぼ毎日」が最も多い41.8%を占めた。国が調査した全国平均よりは低くなっているが、4割を超えている。ケアの時間については、「1~2時間」が全体の35%と最も高く、全国平均を示した国の調査と比較すると、静岡県では短い時間を回答した割合が高い。ただ、「1日7時間以上」は4.4%に上り、ケアが生活の中心にならざるを得ない子どもたちもいる。
問題の深刻さを示すのが、「1日7時間以上、家族のケアに費やしている」と回答した人のうち、54.5%が「学校生活への影響はない」と答えている点だ。県は「ケアが当たり前になって、生活への影響を感じていない、きつさを十分に自覚できていない児童・生徒がいると推察される」と分析している。
自由記述のアンケートでは、苦しい胸の内を吐露する声もあった。中学1年生の女子は「たまには休憩がほしい」、高校3年生からは「欠席扱いになり、進級に影響する。学校の理解がない」、「周りに信頼できる大人がいなくて、誰にも相談できない」とつづった。他には「ヤングケアラーが知られていない」、「金銭的な余裕がなく、老人ホーム等の施設に入れられない」、「介護施設を増やしてほしい」など、支援を求める声が多かった。
実態調査はサポートの最初の一歩。県は新たに電話とLINEによる相談窓口を開設した。相談は毎日受け付けており、連絡先は県のホームページに記載されている。ヤングケアラーの負担を軽減するため、悩みを相談できる場所、そして悩みを解決する支援策が急務となっている。
(SHIZUOKA Life編集部)