2024/01/22
転職やテレワークだけじゃない 移住の選択肢に起業 地域貢献と両立できる注目の事業
■コロナ禍で関心高まる移住 静岡県への相談件数は過去最多
静岡県は移住先として全国でトップクラスの人気を誇る。移住を考える上で、最大のハードルとなるのは仕事。静岡県は新幹線で首都圏に通勤できるメリットはあるが、移住をきっかけに起業する選択肢もある。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、地方への移住は関心が高まっている。総務省によると、昨年度の静岡県への移住相談件数は過去最多となる1万3496件。都道府県別では5位に入った。東京都にある認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」が発表した全国の移住希望地ランキングでは、静岡県が窓口相談者数で3年連続1位に輝いた。
人口減少や首都圏への人口流出に悩む地方自治体にとって、移住・定住は事業の柱となっている。移住者を獲得する方法の1つとして取り組んでいるのが「地域おこし協力隊」。自治体が活動費を負担して、地元の魅力を発信する役割を任せる制度だが、任期は1~3年と短く、定住につながりにくい課題がある。
移住への関心はあっても、定住するためには仕事が不可欠。一般的には転職が手段となるが、移住をきっかけに起業する選択肢もある。
■地域の魅力発信「まいぷれ」 静岡県は10市町で運用
移住者が起業と地域貢献を両立させる事業として注目されているのが、千葉県船橋市に本社を置く「フューチャーリンクネットワーク」が展開する「まいぷれ」事業。石井丈晴社長は「地域にネットワークができることによって頼られる存在になり、地域の様々なイベントや事業に取り組める存在になれます。地域のハブになれるおもしろさやチャンスがあります」と語る。
まいぷれは各地域の魅力を掘り下げて情報発信するサービスで、ポータルサイトに加えて、SNSやGoogleマップとも連携して情報を届けている。実際に事業を運営するのはパートナーと呼ばれる地元の企業。パートナーは店舗から利用料を得て、情報発信する仕組みとなっている。静岡県では静岡市や浜松市、三島市や函南町など10市町で、まいぷれが運用されている。
移住やUターンで、まいぷれ事業を始めた人も少なくない。鹿児島県薩摩川内市とさつま町でまいぷれを運営している「CANFORA COMPANI」の平田宗嗣代表は東京や福岡で教育関係の営業職を経て、鹿児島へのUターンを決めた。独立を考えたきっかけは2016年頃だったという。
「鹿児島で同窓会に参加した時、若い世代が地元に残らないという話を聞きました。実際、さつま町の過疎化率は全国的にも高く、すごい勢いで人口が減っています。その課題を解決するために、地域と関わりながら仕事ができるまいぷれに興味を持ちました」
平田代表は資金や営業の仕方など、まいぷれ事業のリアルを知るアカデミーを受講し、2019年に起業を決断した。教育関係の前職で営業経験はあったものの、未経験の事業とあってアカデミーで学んだ基本を徹底。利用店舗を増やすための営業スタッフを雇用し、現在は営業、店舗フォロー、ライター計8人体制で運営している。
■店舗同士をつなげるイベント 自治体とも連携
まいぷれは利用店舗の情報を掲載するだけではなく、店舗同士をつなげて新たな商品やサービスを生み出したり、イベントを開催したりするなど、事業に広がりがあるところが大きな特徴となっている。地域に貢献しながら収益を上げる仕組みができている。
CANFORA COMPANIも異業種交流会を開いたり、自治体と情報協定を結んだり、地域とのつながりを深めている。平田代表は「地方には、まいぷれのような仕事はあまりないので魅力的な仕事だと感じています。地域貢献は多くの人が抱く思いで、みんなが同じ方向を目指して頑張れています」と語る。
フューチャーリンクネットワークの石井社長も「まいぷれ事業に社会的意義があるのは大前提と自負し、地域活性化の実現に近づけている誇りがあります」と力を込める。移住やUターンの選択肢は転職だけではない。起業によって地域に不可欠な存在になる方法もある。
フューチャーリンクネットワークでは、まいぷれ事業の運営に興味を持っている個人や企業を対象にオンライン説明会(土日も可)を開催している。また、カメラオフで気軽に視聴できる合同説明会や事業内容を学べる体験講座も用意している。
■まいぷれ事業の資料請求
https://partner-mypl.net/contactus/
(間 淳/Jun Aida)