2024/03/02
新卒採用解禁 売り手市場のキーマンは保護者 「オヤカク」経験者は半数以上
■人材不足の傾向変わらず 企業は保護者向けの取り組み重視
来春に卒業を予定している大学生や大学院生を対象とした新卒採用の会社説明会が3月1日に解禁された。人手不足による売り手市場の傾向は変わらず、中小を中心とした企業側は採用に苦労すると予想される。最近では就活生の保護者を対象にした説明会を実施するなど、人材を確保するため保護者への対策や対応に力を入れる企業も増えている。
企業が希望する採用人数よりも就職希望者が少ない売り手市場が近年、続いている。残業時間の規制を強化する2024年問題は人手不足に拍車をかけ、企業が人材を求める動きは加速するとみられる。
最近では、就活生の保護者に焦点を当てた採用活動を展開する企業も多い。静岡県でも保護者を対象にしたセミナーや説明会を実施する企業が増えている。保護者に向けて自社の魅力を伝えて子どもにとって優良企業だと認識してもらい、保護者を企業の“味方”にする戦略だ。
さらに、「オヤカク」という言葉も広がっている。企業が就活生に内定を出す時、「親の確認」を事前に取っておくことを意味する。企業は入社誓約書に保護者の署名を求め、誓約書には「正当な理由なく入社を拒否しない」といった文言が記されている。
■「オヤカク」経験者52.4% 6年で17.7ポイント上昇
大手就職サイト・マイナビによると、今年度に子どもの内定先企業から「オヤカク」を求められた保護者は52.4%と半数を超えている。昨年度から4.1ポイント上昇し、6年前と比べると17.7ポイント増加している。
「オヤカク」以外に保護者が子どもの内定先から受けた連絡には、「内定式・入社式の招待」が17.3%、「保護者向け資料の送付」は8.6%などとなっている。2024年卒業の学生を対象にした調査では、内定先の決定でアドバイスや意見を聞いた相手として最も多かったのが「父親・母親」の61.9%で、「友人」の23.9%、「就職関連の学校職員」の16.2%を大きく上回った。企業側は保護者が就活生に与える影響は大きいと判断している。
「オヤカク」を含めた企業側による保護者へのアプローチは、就活生も保護者も賛否が分かれる。「企業が親の顔色を伺っているみたい」、「就職先は自分の意志で決めてほしい」といった声が上がる一方、「就職後に文句を言われたくないので、親も納得する企業で働きたい」、「子どもがどんな企業に興味を持っているのか、子どもに合う企業なのかを知っておきたい」などの意見もある。
既存のやり方では人材確保が難しい企業は、保護者向けの取り組みが打開策の選択肢となる。今後も「オヤカク」や、親を対象にしたオリエンテーション「オヤオリ」を実施する企業が増えると予想されている。
就職活動については、政府は学業への影響を考慮して3月1日に会社説明会を解禁している。静岡県内でも新卒採用が本格的に動き出す。ただ、解禁日を破っても罰則がない。そのため、採用活動を早めて、すでに内定を出している企業も少なくない。
(SHIZUOKA Life編集部)