2022/08/18
あなたの子どもはどっち?知っておきたいタイプで変わる効果的な勉強法
■同時処理と継次処理 2つに大差があると学習のつまずきになる可能性
情報を処理する際、大きく分けて2つのタイプがある。同時処理と継次処理。ほとんどの人が状況や課題に応じて両方を使い分けているが、2つに大きな差がある場合、学習のつまずきにつながるかもしれない。そして、子どもがどちらのタイプなのか知っておくと、より効果的な勉強の仕方が見えてくる。
カレーの作り方を説明される時、どちらの方法が理解しやすいだろうか。
【A】①野菜と肉を切る→②鍋に入れて炒める→③鍋に水を入れる→④煮る→⑤カレールーを入れて煮る。というようにスタートから完成まで手順の説明を受ける。チェックリストのイメージ。
【B】料理の過程や完成形のイラストを見て「野菜を切って肉と炒める。水を入れて煮る」、「その後、カレールーを入れて煮る」と補助的な説明を受ける。
情報処理の過程には、「継次処理」と「同時処理」2つのタイプがある。継次処理は1つ1つの情報を時系列に沿って処理する。部分を積み重ねて全体を理解する方法で、カレーの作り方の場合は「A」にあたる。
一方、同時処理は複数の情報を関連付けて同時に処理する。全体から部分を捉えるやり方で、カレー作りの「B」にあたる。静岡市で子どもの学習を支援する教室「まなびルーム ポラリス」を運営する臨床心理士の澳塩渚さんは「どちらか1つしか使わないのではなく、人間は必要に応じて使い分けています」と説明する。
■継次処理と同時処理、どちらが優位? 目安を知る特徴
継次処理か同時処理か、自分の子どもはどちらが優位かを知っておくと、勉強のやり方や教材の選び方が見えてくる。以下の特徴はタイプを知る目安となる。
【継次処理が優位な人の特徴】
・漢字の書き順や九九の暗唱を苦にしない。
・絵や図より、文字の方が理解しやすい。
・目的地へ向かう時に順路アプリを便利に感じる。
【同時処理が優位な人の特徴】
・図形やグラフの読み取りを苦にしない。
・折り紙やプラモデルが得意。
・文字を読むよりも動画の方が理解しやすい。
・目的地へ向かう時に大まかな位置が分かる地図アプリを便利に感じる。
こうした特徴を把握していると、例えば掛け算の筆算をする時、理解しやすい方法が変わってくる。継次処理が得意な子どもには、「10の位の数字を立てる」、「1の位の数字を立てる」と順序立てるというようにリスト化する。
それに対し、同時処理の子どもには、計算方法を矢印で示して全体の完成形を把握できるようにする方が合っている。
継次処理にも同時処理にも、それぞれ長所と短所がある。継次処理が優位な人は、作業が丁寧に進みやすい。やるべきことを順番に書き出すと、モチベーションが上がりやすい。一方、手順通りに作業を進めるためスピードに欠け、手順が1つ抜けると混乱する時がある。また、丁寧過ぎて完璧を求めると精神的なストレスを感じやすい。
■どちらにも長所と短所 専門家が警鐘「苦手な方を伸ばそうとしない」
同時処理が優位な人は、素早く全体を理解できる。その反面、詰めが甘くなりがち。また、子どもの場合、自分が描く完成イメージに手先の器用さなどが追いつかず困惑する時がある。澳塩さんは「どちらが優位か知っておけば、自分の弱点を把握しやすくなります。同じ内容を勉強するにも、効率良く勉強する方法、教材の選び方が分かると思います」と語る。
同時処理と継次処理、子どもがどちらかを苦手にしていたら、保護者は能力を上げたいと思うかもしれない。だが、澳塩さんは警鐘を鳴らす。
「苦手な方を伸ばすのは非常に大変です。大人でも得意ではないことを継続して努力するのは苦しいはずです。苦手なことを続けて成果が見えないと、子どもは無力感を抱いて学習しなくなります。勉強が嫌いになる子に多いパターンです。得意な処理能力を活用して学習する方が良いと思います」
学習の理解が進まないのは、子どものタイプに合った勉強法や教材を選んでいないことが原因の可能性がある。同時処理と継次処理、どちらが優位か知ると、学習の悩みを解決するきっかけがつかめる。
(間 淳/Jun Aida)