2024/03/08
ゴールド・ボーイ公開 「日本にはない発想の犯罪」 中国の小説を映画で表現
■二転三転する展開 金子修介監督、岡田将生さん主演
名前を確認しなければ、同じ映画監督の作品と気付かないだろう。金子修介監督がメガホンを取った映画「ゴールド・ボーイ」が、3月8日に全国で公開された。ゴジラやガメラ、さらに人気アイドルグループAKB48のミュージックビデオと幅広い作品を手掛けてきた金子監督の新作は、緊迫した展開が繰り広げられるクライム・エンターテインメントとなっている。
中国の小説「悪童たち」を原作としている「ゴールド・ボーイ」は、主演の岡田将生さんが演じる男の犯罪を偶然カメラで撮影した中学生3人が男を脅迫して大金を得ようと計画するストーリー。それぞれの登場人物が本心を隠して相手と駆け引きし、二転三転した末に強烈なインパクトを残す結末へとたどり着く。
金子監督が作品の舞台に選んだのは沖縄だった。原作の舞台は中国の山の中で、日本社会とは異なる。その中でも、独特な空気感を持つ沖縄が映画のイメージに重なったという。
「原作は急峻な崖が犯行現場になっていて、地域社会の中で捜査をかいくぐる部分があります。崖や海という発想から沖縄を思い浮かべ、沖縄を舞台にすると、きれいな部分と隠れている暗黒な部分を同時に描けると思いました」
■静岡県と縁のある金子修介監督 公開前に静岡市でPR
中国の小説やドラマでは膨大な分量を約2時間の映画で表現するのは無理があると捉えられるかもしれない。だが、説明を最小限まで絞り込んだことで、観る人の想像力を駆り立てる。金子監督が語る。
「日本にはない発想の犯罪で、中国の苛烈な競争社会から生まれてきた話だと思います。そのままの形で映画にするのではなく、日本、さらに沖縄という地域社会に落とし込んで、相違点や矛盾点を減らしていきました。原作はおもしろいのですが、日本に置き換えると不自然なところが少なくありません」
金子監督の作品はジャンルを特定せず幅広い。「デスノート2部作」やゴジラやガメラといった怪獣映画。さらに、AKB48が歌う「ハート・エレキ」のミュージックビデオも手掛けている。今回の「ゴールド・ボーイ」はクライム・エンターテインメントと銘打つ。金子監督は「ジャンルに忠実なことで作家性を獲得すると言っていたことがありますが、今回の作品はそれまでとは違い、新型コロナやウクライナ戦争、それから三体という中国のSF小説を読んだことが大きいです」と新作の背景を語る。
「ゴールド・ボーイ」公開の1週間ほど前、金子監督は映画に出演する星乃あんなさんとともに舞台挨拶で静岡市を訪れた。2001年に公開された作品「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃」ではゴジラ上陸のシーンを焼津市の港で撮影。熱海市で開催されている「熱海怪獣映画祭」では開幕イベントで登壇するなど、静岡県との縁は深い。
「2時間の映画に収めるために説明や台詞をカットしたところをお客さんが推理しながら見ていただけたらと思います」と金子監督。多くを説明しない理由は、映画を見終わった後に分かるだろう。
(間 淳/Jun Aida)