2024/04/30
【静岡県知事選挙】“板挟み”の浜松市長は「発言は控える」 立場明確にできない複雑な事情
■浜松市の中野祐介市長 支持・応援する候補者明言せず
川勝平太知事の辞職に伴う静岡県知事選挙は投票日まで1か月を切った。3人の候補による選挙の構図が固まる中、支持する候補者の名前を挙げる市町のトップもいる。ただ、県内最大の人口を誇る浜松市の中野祐介市長は明言を避ける。背景には複雑な事情がある。
今回の知事選は異例の短期決戦となる。新人職員に向けた4月1日の訓示をきっかけに川勝知事が突如、辞職を表明。当初は県議会6月定例会の冒頭で辞職願を提出する意向だったが、早期辞職を求められたこともあり、4月10日に辞職願を届けた。これにより、知事選の投票日は5月26日に決まった。
現在のところ、知事選には元副知事の大村慎一さん、前浜松市長の鈴木康友さん、共産党静岡県委員長の森大介さんの3人が立候補を表明している。県内の市町や町長は自身が支持する候補者を明らかにする中、言葉を濁しているのが浜松市の中野市長だ。4月25日の定例会見で次のように述べた。
「私としては公式の場で、どちらが良い、どちらを応援するという発言は控えさせていただきたいと思っています。いずれにしても、静岡県の先を決める重要な選挙なので、県民の皆さまには候補者3人の人物、政策を冷静に判断していただいて選挙に行っていただきたい」
■候補者は総務省の先輩と市長の前任 自身の選挙は自民党と浜松財界が支援
さらに、中野市長は今回の県知事選で2つの対立構図への違和感を口にした。自民党県連は大村さん、立憲民主党や国民民主党は鈴木さんを推薦。また、経済界は静岡市が大村さん、浜松市が鈴木さんを支援している。これに対し、中野市長は政党や地域の対立が知事選に持ち込まれることに疑問を投げかけた。
「地方自治の現場と国政の話は少し違うのかなと思っています。何よりも、地域間の対立構図となるのは私が一番望まないところ。静岡県全体として一丸となって、同じ方向へ取り組みを進めていかなければいけないタイミングですから」
中野市長が立場を明確にできない理由は複雑な事情がある。大村さんは総務省時代の先輩で、鈴木さんは浜松市長の前任。そして、自身の市長選では自民党から推薦を受け、浜松市の経済界からも支援された。大村さんか鈴木さんのいずれかを支持すると表明すれば、お世話になった人や組織に砂をかける行為と捉えられかねない。
中野市長は3人の候補者が立候補を表明してから、誰とも直接会っていないという。次の知事には「まずは県民の声にしっかりと耳を傾けてくれる方にお願いしたい。静岡県は、やらなければいけないことが山積していて待ったなしの状況。地方自治を理解していて、それを進める行動力や知見のある方に知事になってほしいと思っています」と話した。県知事選は5月9日に告示、26日に投開票される。
(SHIZUOKA Life編集部)