2022/08/31
なぜライフプランは男性よりも女性に必要なのか? 重要性とシート作成のポイントを解説
■ライフプランは「自分中心」に 可視化すると実行力アップ
近年、見聞きする機会が増えた「ライフプラン」。人生の生活設計を意味するが、なぜライフプランが重要なのか。設計する際に、どんなポイントがあるのか。今さら聞きにくい基本を女性のキャリア支援を手掛ける静岡市のNPO職員が解説する。一番大切なのは「自分」を中心に考えることで、特に女性は作成が必要だという。
ライフプランという言葉は知っていても、実際にライフプランを立てた経験がある人は多くないかもしれない。自分の将来に想定されるイベントを考えて将来を設計するもので、ほとんどはお金と関連付けて組み立てていく。頭でイメージするよりも可視化した方が計画の実行力が上がるため、シートを作成するのが一般的だ。
シートには例えば、半年後に出産、5年後に長男が中学校に入学など予定しているイベントを記入し、その時の夫婦の収入や支出、年間の貯蓄など、想定されるお金の動きを書いていく。シートを作ることで、自分自身や家族がどんな考え方を持ち、将来に向けてどんな準備が必要なのかなどが見えてくる。
ライフプランシートを作成する際、どんな点が重要なのか。静岡市のNPO法人「男女共同参画フォーラムしずおか」の職員で、2級ファイナンシャル・プランニングの資格を持つ松永裕美さんは「自分を軸にする」ことをポイントに挙げる。
ライフプランシートを活用した可視化が重要
■女性は子どもや夫を優先に設計しがち 背景にジェンダーの問題
例えば、親の介護が5年後くらいから始まりそう、配偶者が3年以内に転職を希望しているなど、外部要因が想定されても、まずは「自分がどんな人生を歩みたいか」、「自分はどんな働き方をしたいのか」を考えるよう勧めている。特に家事や育児の中心に担っている女性は夫や子どもを優先にする生活から、ライフプランも他者優先で立てがちだが、自分の理想を描くことが大切だという。
松永さんは「自分は仕事を続けたいと思っていて親が介護状態になったとしたら、じゃあ仕事を辞めようではなく、仕事を継続する前提でどんな方法があるかを考えます。自分を軸にするところは崩さず、外部要因に対応するライフプランの作り方をお勧めしています」と説明する。
専業主婦の女性が男性と比べて、自分を軸としたライフプランを立てにくいのはジェンダーの問題が潜んでいるケースが多い。夫の転勤や出産を機に仕事を退職し、普段から他者優先の生活やケア労働を担っている女性にとって、そもそも自分を軸に物事を考える時間を持つ機会が少ない。
また、女性のキャリアと金融リテラシーを研究する武庫川女子大学の西尾亜希子教授によると、女性は困窮するリスクが男性より高いという。西尾教授は「長寿」、「稼ぎが少ない」、「出産・育児などの理由により退職する傾向」、「配偶者の転勤によって仕事(および福利厚生)をあきらめる側になりやすいこと」など8つの要因を挙げている。
こうした社会的背景からも、ライフプランが重要になる。松永さんは「一番のリスクヘッジは経済的自立です。ただ、それを分かっていても難しいのが日本の現状だと思います。男性の長時間労働を解消して家事や子育てを担える社会に変わり、女性が長期的に働く方法を考えることが大事です」と話す。
そして、ライフプランシートを作成する際は「自分を軸にする」以外にも、「できるだけ楽しみながら細かく書く」、「可能性があるものは全て記入する」ことをポイントとして伝えている。シートの更新は年に1回がベストだが、再就職、住宅の購入、配偶者の転職、子どもの進路など、大きなイベントがあった際に見直しても構わない。勉強や仕事で目標を立てるように、人生設計は理想の人生を送る助けになる。
(間 淳/Jun Aida)