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2022/10/04

静岡県の対応で関心高まる自衛隊の災害派遣 要請求める自治体は少数派?

静岡県内に被害をもたらした台風15号

■「緊急性」、「公共性」、「非代替性」 自衛隊派遣要請に3つの条件

台風15号が静岡県を通過して10日。静岡市清水区で続いていた断水は、ようやく全域での解消が見えてきた。今回の台風被害で住民から指摘されているのが、県や市による自衛隊への災害派遣要請の判断。「要請が遅い」という声が上がる一方、自衛隊の災害派遣には3つの原則がある。過去の災害では派遣要請をするかどうかの判断に悩む自治体が多く、実際に派遣を求めたのは4割にも満たないことが国の調査で明らかになっている。

 

台風15号が静岡県に最も接近したのは、923日夜から24日未明だった。静岡市清水区では最大で、区民の8割に当たる63000軒で断水が発生した。原因はがれきや土砂が取水口に詰まったためだった。

 

静岡県が自衛隊に災害派遣要請したのは、926日の午前1025分。自衛隊は住民への給水支援に加えて、取水口に詰まった流木や土砂などを除去した。27日からは水道管を水で満たして洗浄する「充水作業」を開始。復旧作業は一気に加速し、生活用水の供給が再開した。飲用も段階的に開始し、間もなく全域で完全復旧する見通しだ。

 

断水の解消は自衛隊がいなければ、さらに時間がかかっていたと予想される。被災地で自衛隊が大きな力になるのは間違いない。だが、災害派遣は「緊急性」、「公共性」、「非代替性」と3つの原則を満たすケースに限られる。非代替性とは、自衛隊以外の方法がないことを指す。

浜松市天竜区では橋が流される被害

■災害時に知事へ自衛隊派遣要請した市町村は4割弱 判断に難しさ

災害対策基本法68条の2には、市町村長が都道府県知事に災害派遣の要請を求められるとある。今回の台風15号では、静岡市の田辺信宏市長が川勝平太知事に要請する流れだ。

 

ただ、自衛隊法第83条では、自衛隊への派遣要請について「都道府県知事等は災害に際して、部隊等の派遣を要請することができる」と定めている。つまり、静岡県内で災害が起きた場合、市長や町長からの要請がなくても川勝知事独自の判断で要請できる。

 

静岡県も静岡市も今回、被害状況を確認した上で自衛隊への派遣要請が必要と判断した。結果的に決定までに要した時間が、住民から「判断が遅い」と指摘されたわけだが、国の調査では災害時に自治体が判断を迷う現状が明らかになっている。

 

内閣府などが昨年4月から今年3月にかけて実施した調査では、回答した全国199の市町村のうち、災害時に都道府県知事へ自衛隊の派遣要請を求めたのは78市町村で、全体の4割を切っている。また、実際に派遣要請した市町村の約3分の2が「判断に難しさを感じた」と答えている。

 

派遣要請をためらったり、判断に迷ったりした市町村の意見には「どの程度の被害で派遣要請が可能なのか判断できなかった」、「被害状況が分からない中で、何をどう支援してほしいのか絞り込むのが難しかった」、「派遣要請の3つの原則の解釈が難しかった」、「庁内の調整に時間がかかって迅速な要請ができなかった」といった意見が上がっている。

 

参考:自衛隊の災害派遣に関する実態調査-自然災害への対応を中心として- 結果報告書 (soumu.go.jp)

 

想定外が起こり得る災害時、自治体の判断が難しいのは理解できる。いつでも、どこでも、自衛隊に支援を求めるわけにはいかない。ただ、判断の遅れが復旧の遅れに直結する可能性も忘れてはならない。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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