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2025/04/16

「まさか、この店が…」 52年続いたスーパーが閉店 常連客も生き残りの難しさ痛感

■スーパー田子重の1号店 焼津市の小川店が閉店

静岡県焼津市にあるスーパー田子重小川店が4月16日、閉店を迎えた。地元住民は52年間の営業に感謝すると同時に、スーパーをはじめとする小売業が生き残る難しさを感じていた。

 

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田子重は静岡県内に16店舗を展開するスーパーマーケットチェーンで、1973年に第1号店をオープンした。その1号店が16日に閉店した小川店だった。

 

営業最終日には朝から来店客が列をつくり、1日を通して駐車場がいっぱいになるほど混雑した。店はセールや記念品の贈呈などで来店客に感謝の気持ちを示し、来店客も店員に声をかけたり、写真を撮ったりして閉店を惜しんでいた。

 

30年以上通っていたという近所に住む人は「この場所に田子重があるのが当たり前だったので、あすから買い物できなくなることを想像できない。今までありがとうと伝えたい」と感謝した。別の常連客は「まさか、この店がなくなるとは思っていなかった。最後に記憶を残したくて、きょうは買い物に来た」と話した。

2階の駐車場にも列ができるほど混雑

■「大手以外は生き残り難しい」 閉店に冷静な買い物客も

感傷的になる人や驚きを隠せない人がいる一方、閉店を冷静に受け止めた人もいる。最終日に大混雑する店内を見て「毎日これくらい人が入っていれば、閉店にならなかったはず。きょうのようにセールをして商品が安くならないと人が集まらないのが現状」と指摘。別の買い物客は「ネットで買い物する時代にスーパーを含めて大手以外の小売は生き残りが難しい」と分析した。

 

静岡県内では、浜松市の一部のようにロピアやトライアルといったスーパーが次々とオープンしているエリアもある。それに対し、静岡市のアピタ静岡は3月末に閉店し、静岡県を含む全国に店舗を展開するイトーヨーカドーが大幅に店舗数を減らすなど小売業の厳しさも浮き彫りになっている。特に人口が少ない地域での経営には苦戦を強いられている。

 

インターネットでの買い物が増加する中、小売業の生き残りは難しさを増している。いつでも必要なものを購入でき、自宅で荷物を受け取れるネットショッピングは店舗よりも圧倒的に利便性が高い。

 

薄利多売を基本とする小売業にとっては勢いが止む気配のない強い逆風で、大量販売して利益を出す大手企業以外は経営維持が簡単ではない。大手であってもプライベートブランドやECサイトに力を入れるなど、商品を仕入れて店舗で販売するだけではない戦略を打ち出している。

 

■「やむなく閉店」 業績低迷からの回復できず…

静岡県内では知名度が高く、住民を支えているスーパー田子重。小川店の閉店について次のように説明した。

 

「小川店が人口減少地域に立地しているという困難な問題に対し、これまで鋭意様々な経営努力を重ねて参りましたが、長年の業績低迷からの回復はいかんともしがたく、やむなく閉店させて頂くことになった次第です」

 

店舗を構える小売業は、店舗を維持するため老朽化などに伴う設備投資も必要になる。採算を取るのが難しい人口が少ないエリアで、どのように収益を上げるのか。52年続いた田子重小川店の閉店は小売業の現状を象徴する出来事と言える。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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