2022/10/21
歴史と未来を結ぶ国内最大級の工芸体験施設 静岡市でものづくりを学ぶ
■2021年リニューアルで“別世界”に 静岡市の「駿府の工房 匠宿」
伝統的な和の柔らかさと近代的な雰囲気が融合する。伝統の継承を使命にする決意が施設から伝わってくる。静岡市にある「駿府の工房 匠宿」は国内最大級の工芸体験施設で、「歴史と未来を結ぶ場所」をコンセプトにしている。年齢も国籍も問わず、日本のものづくりの美しさを知る場所となっている。
歌川広重の「東海道五十三次」に登場する宿場町・丸子。豊かな緑と調和し、互いを引き立てるように「駿府の工房 匠宿」は来客を迎える。エントランスには静岡の伝統工芸・駿河竹千筋細工のランプシェードや藍染。歴史と未来を結ぶコンセプトは入口から表現されている。
匠宿は2021年5月、リニューアルオープンした。それ以前に訪れたことがある人にとっては、“別世界”と感じるほどの大幅改装と言える。外観から目を引き、施設内は自然に囲まれたロケーションを生かした開放的な空間を作り出している。
国内最大級の工芸体験施設をうたう匠宿は、ものづくり体験が充実している。特に、他では体験できないメニューが「駿河竹千筋細工」。一般的な竹細工と違い、枠に穴をあけて丸く削った細かい竹ひごを差して仕上げていく。手間がかかる分、でき上がった作品には繊細さや優しさが表れる。
■家康から始まった駿河竹千筋細工 染もの、漆など豊富な体験メニュー
駿河竹千筋細工の歴史は、徳川家康が趣味にしていた鷹狩り用の餌かごを作ったのが始まりと言われている。家康は隠居後、静岡市にある駿府城、浅間神社、久能山東照宮の造営を目的に、全国から指折りの職人たちを集めた。そのため、静岡市には伝統工芸技術が根付いたとされている。
匠宿の駿河竹千筋細工体験では、丸いフォルムがかわいいペン立てや満開に咲く花のような形をしたコースター、趣のある風鈴や花器などを作ることができる。
その他にも、染めもの、漆、陶芸、木工と体験メニューは多岐に渡る。そして、それぞれの工房長は静岡県にゆかりがある職人たちが務めている。全員が1970年代生まれと若いが、すでに国内外で多くの賞を手にしている。
単に作品を作る体験だけではないところにも、施設の特徴とこだわりがある。ものづくり体験に込めた思いは「工房を通じた後継者の育成」。
体験を始める前に職人たちが静岡の伝統工芸について話をするのは、その歴史が過去から現在、未来へとつながっていると知ってもらうためだ。さらに、体験をきっかけに将来、職人を志す子どもたちが増えてほしいという願いも込められている。
■ショップ、カフェ、子どもの遊び場も充実 細部までこだわり
施設がリニューアルされ、ショップや飲食店も充実した。ギャラリー「Teto Teto」には民芸品・工芸品からモダンな日用品まで幅広い商品が並ぶ。小物や食器は普段の生活に彩りを添え、プレゼントにもぴったり。漆の弁当箱や茶筒など、すぐに売り切れて入荷待ちの人気商品も多い。
カフェ「HACH & MITSU」は地元・丸子にある養蜂場のハチミツを使ったレモネードやレモンスカッシュといったドリンクや、静岡県産の食材や調味料を使用したフード、ケーキやタルトとメニューが豊富。店内のインテリアパネルや照明には駿河竹千筋細工が施されており、空間づくりに妥協がない。
施設には他にも、静岡市で継承される工芸品や職人を紹介する「匠宿伝統工芸館」がある。常設展と企画展が開催されており、伝統工芸の知識を深めることができる。
小さな子どもにお勧めなのは「工房 星と森」。静岡市の木材を使った木育スペースでは、森の香りに包まれながら木のおもちゃで遊べる。ものづくりの基本となる「数字」をコンセプトに算数の要素が散りばめられている。
「創る・遊ぶ・学ぶ・触れる・観る・味わう」が体験できる「駿府の工房 匠宿」。今川・徳川時代から受け継がれた静岡市の伝統産業と歴史をテーマにした施設には、学びも安らぎも詰まっている。
(SHIZUOKA Life編集部)
【施設名】
駿府の工房 匠宿(すんぷのこうぼう たくみしゅく)
【場所】
静岡県静岡市駿河区丸子3240-1
【電話】
054-256-1521
【営業時間】
午前10時~午後7時
【休館日】
月曜日
【交通アクセス】
・東名高速・静岡ICから約15分
・新東名高速・新静岡IC約20分
・JR静岡駅からバスで約30分。中部国道線・藤枝駅前行き「吐月峰駿府匠宿入口」で下車
【駐車場】
150台(無料)
【外部サイト】
駿府の工房 匠宿公式HP