2022/11/22
東海道新幹線や東名高速から見える「茶文字」はお茶じゃない!? 実は驚きの大きさ
■携帯電話もトランシーバーもない90年前 白い布と手旗信号で
東海道新幹線や東名高速で静岡県掛川市を通ると、強烈なインパクトを残す景色がある。山肌にくっきりと浮かび上がる「茶」の文字。掛川市のシンボルとなっている。周辺には茶畑が広がっているが、実は茶文字に使われているのはお茶ではないという。
お茶どころ静岡の中でも、掛川市は県を代表する産地の1つ。なだらかな傾斜が多い地形、温暖な気候と適度な雨量はお茶の生産に適している。
その掛川市のシンボルとなっているのが茶文字。1932年、地元の人の提案で標高532メートルの山「粟ヶ岳」の山肌につくられた。当時は携帯電話どころかトランシーバーもなく、縄に白い布をつけて茶の文字を描き、遠くから手旗信号で位置を確認していた。
茶文字は鮮やかな緑色をしており、周りには茶園が広がっているため、お茶で文字を描いていると思われがち。だが、実は使われているのはヒノキ。1本1本、位置を計算して植えられている。元々は松を植えていたが、松くい虫の被害で木が枯れてしまうためヒノキに植え替えた。
新幹線の車窓や高速道路から見た茶文字は、どのくらいの大きさだと想像するだろうか。実は縦、横130メートル。それだけ巨大な文字を、手旗信号によって木を1本1本植えてつくったわけだ。
■茶文字周辺は茶畑 世界農業遺産の茶草場農法で管理
茶文字の周辺にある茶畑は、伝統的な「茶草場農法」で管理されている。茶草場農法は茶園近くで刈り取ったススキなどを肥料として茶畑に敷く。傾斜地の茶畑が乾燥したり、肥料が流れ出たりするのを防ぎ、有機物やバクテリアの多い腐葉土をつくる。土壌が栄養分豊かなため、香りも味も優れたお茶が生産できる。
さらに、茶草場農法は貴重な生物の保全にもつながっている。品質の良いお茶の生産と生物多様性の保全を両立しているとして、2013年に世界農業遺産に登録された。
見る者を驚かせ、喜ばせるインパクト抜群の茶文字。茶どころ掛川のプライドと伝統継承の証と言える。
(SHIZUOKA Life編集部)