2022/11/27
利用者は40代がトップタイ 沼津市でキックボード社会実験 安全面の不安解消が課題
■利用者の比率トップは40代と20代の28% 10代は60台より少ない1%
静岡県沼津市は、10月中旬まで1か月間実施していた電動キックボードの社会実験に関する結果を公表した。利用者の年代は40代が20代と並びトップだった。利用者からは移動が楽しいといった肯定的な意見が出た一方、安全面や機能に不満の声も上がった。
沼津市では静岡県で初めて、ヘルメットを着用せずに公道を走ることができる電動キックボードの社会実験が9月17日から10月16日まで行われた。市がまとめた実施結果によると、この期間、沼津駅から沼津港の間に設置した電動キックボードを利用したのは226人だった。
利用回数は587回、平均走行距離は2.18キロ。年代別の利用者は20代と40代が最も高く28%、次いで30代の26%、50代の15%となった。10代はわずか1%で、60代の2%を下回った。
利用者のうち47%は沼津市在住で、沼津市以外の静岡県在住者が27%、県外在住者は26%となった。複数回答可能の質問に対しては、3人に2人が「移動が楽しい」と答えている。「開放感がある」が51.4%、「新しい乗り物」は50%と、半数以上が肯定的に捉える意見があった。
■「危ない」、「遅い」の指摘 沼津市は「事業継続は慎重な判断必要」
一方、「危ない」と回答した人は34.8%、「遅い」は45.7%と課題を指摘する声も出ている。安全面では「ミラーはあるが後ろが見えない」、「重心が高く不安定」、「行動を走るのは危ない」などの指摘があった。
沼津市は「同様の社会実験を実施した他地域に比べ、収益性は高かったものの、事業継続に向けては慎重な判断が必要であり、安全に対する不安解消も不可欠。今後の改正道路交通法の施行を見据え、引き続き事業者と検討していきます」とコメントしている。
沼津市によると、電動キックボードは市内7カ所に15台設置して、月間利用回数は587回で売上高は15万5490円。似たような条件で県外の他の市と比べると、利用回数は3.1倍、売上高は4.2倍だった。
電動キックボードは道路交通法上の車両に該当するため、道路を走る時はヘルメットの着用が必要となる。運転免許も求められ、電動バイクの最高速度によって原付バイク、または自動二輪車と同様の扱いになる。
沼津市を含む全国で実施されている社会実験は、国の特例制度を活用することでヘルメットの着用が任意となっている。最高速度が15キロ以下に制限されているため、トラクターなどと同じ小型特殊自動車に分類されるためだ。
■東京では9月に電動キックボードで死者 浜松でも衝突事故
ただ、9月には国の認可を受けた東京都の事業者からレンタルした電動キックボードに乗っていた男性が、転倒して死亡している。静岡県内でも昨年11月、浜松市で電動キックボードに乗っていた男性が交差点で軽乗用車と衝突する事故が起きている。
電動キックボードに関しては、今年4月に改正道路交通法が可決・成立し、最高速度20キロ以下のものは「特定小型原付自動車」に分類し、ヘルメット着用を努力義務としている。車道だけではなく、自転車道の走行も可能。2024年4月までに施行される。
手軽で便利なことから都市部を中心に需要が高まると予想される電動キックボード。沼津市の社会実験でも好意的な意見が優勢だったが、安全面への不安も高い比率を占めた。
(SHIZUOKA Life編集部)