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2022/12/05

イチロー氏指導の富士高 広瀬すず主演映画のモデル 監督は前任校でセンバツ出場&プロ輩出

イチロー氏の指導を受けた冨士高校

■卒業生にプロ通算118勝投手や戦場カメラマン

大リーグのマリナーズなどで活躍したイチローさんが4日、静岡県富士市にある富士高校の野球部で特別講師を務めた。イチローさんが高校で指導するのは全国6校目で、静岡県では初めてとなった。富士高校を選んだ理由は、チームを率いる稲木恵介監督が勧めている野球の普及活動だった。

 

2020年12月に和歌山県の智辯和歌山高校で初めて野球部の指導をしてから、全国の高校を回っているイチローさん。今年2校目に選んだのは、富士市にある富士高校だった。

 

富士高校は今年創立100周年を迎えた進学校で、百人一首部は全国屈指の強さを誇る。競技かるたを題材にした少女漫画で、静岡市出身の女優・広瀬すずさん主演で映画化された「ちはやぶる」のモデル校としても知られている。

 

野球部は1979年夏と1987年春の2度、甲子園に出場している。卒業生には巨人や広島などで通算118勝をマークした渡辺秀武さんや、戦場カメラマンの渡部陽一さん、国民民主党の衆議院議員・田中健さんらがいる。

 

イチローさんは、富士高校から指導依頼を受けたわけではないという。野球部が地元の子ども向けに野球教室を開催し、普及活動に熱心なことを知り、自ら訪問を希望した。

選手と談笑する稲木監督(右)

■稲木監督は前任の三島南高校でも園児対象の野球教室

富士高校野球部の普及活動は、今春就任した稲木恵介監督によるものだ。稲木監督は前任の三島南高校で2014年から、地元の保育園児らを対象に野球教室を続けていた。参加者は延べ1000人を超えている。

 

ほとんどの園児が野球のルールを知らないため、選手たちは印刷したアニメキャラクターを貼り付けた的を手作りしてボールを投げる楽しみを伝えたり、子どもたちに分かりやすい言葉遣いを工夫したりしていた。野球の楽しさを知った園児や三島高校野球部の選手に憧れる園児も多く、大会前には応援メッセージが届けられた。

 

野球の普及と地域貢献に加えて、稲木監督の指導方針には文武両道がある。三島南高校野球部では平日の練習は2時間。効率的に技術を磨くため、フリー打撃ではスイングを撮影していた。6球スイングしたら撮影した映像を見て修正点を確認して、次の6球に臨む。映像をチェックしている間に、他の選手が打席に入り、待機時間をつくらないようにした。

 

ティー打撃ではスイングスピードを計測し、トレーニングによる自分の体の変化も数値化する。選手たちが課題を認識して自主的に取り組む環境をつくる稲木監督は「脱高校野球」を掲げている。

 

■2021年に21世紀枠で甲子園出場 OBに楽天・前田銀治

グラウンド内外での活動が評価されたのが、2021年のセンバツ出場だった。秋の静岡県大会準々決勝で、県内屈指の強豪校・静岡高校に3-1で勝利。21世紀枠で甲子園出場を決めた。

 

聖地でプレーするのは、春夏通じて創部100年目で初めてだった。この時に主力だった前田銀治外野手は2021年秋のプロ野球ドラフト会議で、楽天から3位指名を受けている。

 

イチローさんの訪問に驚き、感激した富士高校ナインと稲木監督。継続してきた競技人口拡大の活動や野球に取り組む姿勢が、想像以上の形で実を結んだ。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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