2022/12/18
静岡県で時代劇の世界を満喫 江戸時代の町並みを保存・復元した国指定の史跡
■島田市の「島田宿大井川川越遺跡」 時代をタイムスリップ
通りを歩いていると、時代劇の世界に入り込んだ感覚になる。静岡県島田市にある観光スポット「島田宿大井川川越遺跡」。江戸時代の町並みを保存、復元している約300メートルの通りは、国指定の史跡になっている。
川幅が広く、流れが急だったため、東海道の難所と言われた大井川。江戸時代には防衛の要所とされていたため、川に橋を架けたり、船で渡ったりすることが禁止された。
川の向こう側へ移動するには、川越人足(かわごしにんそく)と呼ばれる川を渡る技術を身に付けた人にお金を払って運んでもらうしかなかった。川越人足たちの拠点となったのが、島田宿大井川川越遺跡だった。
当時の町並みを保存、復元した川越遺跡では、川越の仕組みや川越人足の生活を知ることができる。川越の業務で中心を担っていた場所が「川会所」。日によって変わる川の深さや川幅を計測して、川越人足に支払う料金を決めていた。
■大井川の川渡しで活躍した人足の生活を知る貴重な施設
川を渡りたい人は切符のような役割だった「川札」を購入し、川越人足に渡す。川札を販売していたのも川会所だった。川越人足は、人を肩に乗せたり、輦台(れんだい)と呼ばれる籠に乗せたりしていたが、川会所には輦台が展示されている。
大井川は平常時で二尺五寸(約76センチ)の深さがあり、四尺五寸(約136センチ)を超えると、その日は川を渡れない決まりになっていた。川越人足には高度な技術と経験が求められた。10年務めて一人前と言われ、命の危険もあったことから報酬は高額だった。
通りに並ぶ「札場」は、1日の仕事を終えた川越人足から川札を回収し、現金に交換する場所。川越人足は1から10までの組に分かれていて、組の代表者が受け取った現金をメンバーに渡した。それぞれのメンバーは技術や経験も違い、時には体調不良などで仕事を休む人もいたが、賃金は均等に割り振られていたという。
■川越人足の宿や仕事に不可欠なアイテムも公開
川越人足たちが宿泊したり、仕事がない時に待機したりしていたのが「番宿」。10組それぞれに番宿があり、現在は三番宿と十番宿が公開されている。川越人足は当初、大井川の両岸で360人と決められていたが、幕末には650人にまで増えた。
「口取宿」では、現役を引退した川越人足が現役の人足にアドバイスしたり、仕事に偏りが出ないように割り振ったりしていた。その他にも、親睦の場として利用され、現在は人足が履いたわらじを復元、展示している「仲間の宿」や、人足が使う荷造り用の縄やわらじを販売していたと言われる「荷縄屋」もある。
江戸時代から時が止まっているかのような風情を残す「島田宿大井川川越遺跡」。時代をタイムスリップした感覚や時代劇の世界に入り込んだ気分が味わえる。
(鈴木 梨沙/Risa Suzuki)
【施設名】
島田宿大井川川越遺跡(しまだしゅくおいがわかわごしいせき)
【場所】
静岡県島田市河原1-5-50
【電話】
0547-37-1000(島田市博物館)
【開館時間】
8:30~17:00
【休館日】
年末年始
【交通アクセス】
・東名高速・吉田ICから約10キロ
・新東名高速・島田金谷ICから約6キロ
・JR島田駅から静鉄バス(金谷駅行き)またはコミュニティバス(川根温泉ホテル行き)で、バス停「向島西川越し街道入口」下車。徒歩10分
【駐車場】
無料
【外部サイト】
島田市公式HP
川越遺跡の概要 – 島田市公式ホームページ (city.shimada.shizuoka.jp)