2022/12/29
静岡市の老舗メーカーが副業人材を初めて活用 雇用関係にはないメリットとは
■「新しい風を入れたかった」 伊豆川飼料は創業73年で初の試み
新型コロナウイルス感染拡大は、今までの働き方を変えた。オンラインの普及は代表例だが、副業も加速した。創業73年の歴史を持つ静岡市の配合飼料原料と肥料メーカー・伊豆川飼料も、副業の人材を活用している。雇用関係がない外部の人との連携はメリットが大きいという。
静岡市清水区にある伊豆川飼料は1949年創業の老舗。地元・静岡県産の魚を主原料にして、飼料用フィッシュミールや有機質中心の配合飼料などを製造・販売している。また、ここ数年はツナ缶の販売にも力を入れている。
伊豆川飼料では自社の技術を生かした新製品の企画・開発などで、外部の副業人材を活用している。伊豆川剛史専務は、その理由を説明する。
「祖父が創業してから70年以上事業を続けていますが、新しい風を入れたいと思いました」
伊豆川専務は静岡商工会議所の協力を得て、昨年10月に2人の男性に副業で仕事を依頼した。ともに大手企業の社員で、1人はチームをまとめる能力に長け、もう1人はPRや情報発信が得意だったという。
■大手企業勤務の2人に副業依頼 専門性と手軽さがメリット
副業は一般的になりつつあるが、歴史の長い企業ほど“外の血”を入れることへの抵抗が強い傾向にある。しかし、伊豆川専務は副業人材には企業側のメリットが大きいと話す。
「人材が必要となっても、人を雇うハードルは高いです。人が抜けて今までやっていた仕事を任せるための雇用ではなく、新商品開発や新規事業のように新しいことを始める時はなおさらです。副業人材は雇用関係ではないのでハードルが下がりますし、専門的な視点を取り入れることもできます」
伊豆川飼料では、2人に3か月間の副業を依頼した。どちらも関東の大手企業に勤務していたが、オンラインで打合せができるため交通費の負担もなかった。伊豆川専務は「地元に住んでいない人にも副業は依頼できます。自分たちの会社だけではできることが限られています。外部の力、専門の人に頼る重要性を感じました。副業は増えていくと思います」と語った。
依頼される側はキャリアや収入アップにつながり、依頼する企業側は雇用よりも低いハードルで新しい可能性を見出せる副業。今後、必要性が高まっていくのは自然だろう。
(間 淳/Jun Aida)