2023/01/03
静岡県の3市町で人口増加 2位に大差をつけたトップの自治体は? 人が増える好循環
■静岡県の人口2万4286人減少 増加は袋井、長泉、吉田の3市町
この1年で、静岡県の人口は2万4000人余り減った。人口減少対策に苦慮する自治体が多い中、県内では3市町で人口が増えている。最多は袋井市で481人。2位の長泉町に大差をつけている。長年取り組んでいる対策が実を結んでいるという。
静岡県の年齢別推計人口によると、昨年10月時点の県の人口は358万2194人だった。1年前から2万4286人減少した。
推計人口には、出生と死亡による「自然動態」、転入と転出による「社会動態」の2つがある。減少した2万4286人のうち、自然動態は2万4131人、社会動態は155人。県外への人口流出は抑えられたものの、少子高齢化が顕著に表れた形だ。
県内35市町の中で、人口が増えたのは3市町。トップの袋井市は481人、次いで長泉町の55人、吉田町の37人だった。人口に占める増加率は、袋井市が0.55%、吉田町は0.129、長泉町が0.127となっている。
■長泉町に続く成功例 メロンやエコパで知られる袋井市
一方、減少数が最も多かったのは静岡市の5267人。浜松市の3214人、沼津市の1714人と続いている。人口が多い自治体ほど減少数が多くなる傾向にあり、減少率は川根本町の3.35%が最も高く、次いで西伊豆町の3.01%、松崎町の3.00%だった。
静岡県内では少子高齢化や人口減少対策に成功した自治体として、長泉町が知られている。県内でいち早く子どもの医療費無償化に取り組むなど子育て支援が手厚く、首都圏へのアクセスの良さも人気の理由となっている。最近は移住を希望しても、住む場所が確保できないという声も上がっている。
長泉町に続く成功例として注目されているのが袋井市だ。県西部に位置し、人口は8万8000人余り。特産物ではお茶、クラウンメロン、フルーツトマトが有名で、サッカーやラグビーといったスポーツイベント、さらにはアーティストのコンサートも開催されるエコパスタジアムもある。
各自治体が少子高齢化に直面する中、袋井市の人口に占める14歳以下の割合は14.10%と、長泉町の15.53%の次に高い。これは、市が取り組んできた子育て支援が実を結んだといえる。
袋井市では、妊娠から子育てまでワンストップで対応する相談窓口を設置している。市内には子育て支援センターが8カ所ある。園児や小学生から英語教育を積極的に取り入れ、小、中学校ではデジタル化を進めてプログラミングにも力を入れている。
■企業誘致成功で豊かな税収 大型区画整理で住宅も増加
こうした子育て支援は当然、税金が使われる。どんなに強い思いがあっても、市の財政がひっ迫していれば、実現は難しい。袋井市の充実した子育て環境を可能にしているのは、企業からの税収、企業誘致の成功にある。
市内には、げんこつハンバーグで知られる「炭焼きレストランさわやか」や「遠州トラック」が本社を置いている。また、「ハウス食品」や「大塚製薬」、「ヤマハ発動機」や「ポーラ化成工業」など、大手企業の工場も多い。
大型の区画整理も進められ、住宅も増えている。仕事と住居があれば人口が増えるのは自然な流れ。市の子育て支援に魅力を感じる若い世代が移り住む好循環が生まれている。少子高齢化が劇的に改善する見込みは低いため、今後は人口が増える自治体と減る自治体の二極化が加速するとみられる。
(SHIZUOKA Life編集部)