2023/01/04
企業が副業を依頼したい人のタイプは? 静岡市の老舗が初めて活用した外部の力
■静岡市の伊豆川飼料 大手企業勤務の2人に副業依頼
創業73年の歴史を持つ静岡市のメーカーは、初めて副業人材を活用した。終身雇用が崩れ、一般的になってきた兼業や副業のニーズは今後、さらに高まると予想される。企業側から副業の依頼を受けるためには、大切なポイントがある。
静岡市清水区にある伊豆川飼料は1949年に創業した。魚の頭や骨を原料にして、飼料用フィッシュミールや肥料用魚粕、有機質中心の配合肥料などを製造・販売している。
飼料メーカーでありながら、5年ほど前からツナ缶の販売も始めた。清水港で水揚げされたマグロを使い、手作業でつくり上げる高級ツナ缶。老舗の挑戦だった。
そして、1年ほど前には新しい取り組みも始めた。副業人材の活用だ。伊豆川飼料の業務内容とは直結しない業種の2人に副業を依頼。伊豆川剛史専務は「新しい風を入れようと思いました」と話す。
副業を依頼した1人は普段、部品調達の仕事をしており、もう1人は情報発信に強みがあった。どちらも、大手企業に勤務している。伊豆川専務は依頼を決める際、新製品の企画や開発などで外部の力を活用したいと考えていたものの、具体的な役割を決めていたわけではなかったという。決め手は別の要素にあった。
■依頼の決め手は「自分が一番というタイプではなかった」
「話し合いながら方向性を決めていこうと思っていました。2人を採用した理由は、自分が一番というタイプではなかったからです。『おっしゃっているのは、こういうことですか?』というように、一緒に考えられる人です。過去にやってきた仕事をアピールして自分の土俵で話をする人は断りました」
企業が外部の人材に力を借りようとするのは、自社にはない専門的な考え方や技術を必要としているから。ただ、それ以上に、相手の意図や要望を理解して同じ方向に進めるかどうかが重要になる。
本業で部品調達の仕事をしている人は伊豆川飼料で、専門性よりもマネージメント能力の高さを期待された。伊豆川専務は「まとめる力、察する力を発揮してもらいました」と評した。
新卒で入社した企業に定年まで在籍する働き方は、過去の形になりつつある。副業をするには、企業が求める人材の特徴を知るのが一番の近道。必ずしも専門性が最優先されるわけではない。
(間 淳/Jun Aida)