2023/01/20
リニア問題で静岡県が県民の質問に回答 田代ダム案とは?実現性は?課題は3つ?
■川勝知事と県の事務方 「田代ダム案」の認識で相違
リニア中央新幹線のトンネル工事をめぐり、水問題の解決案として期待される田代ダムの取水抑制案について、県が見解を公開した。川勝平太知事と県の事務方の説明に違いが生まれていることから、県民から質問が寄せられており、その答えを示した形だ。「田代ダム案」とは、どんな内容なのか?その実現性、実現までの3つの課題を説明している。
リニア中央新幹線工事を進めているJR東海は2027年に東京―名古屋間の開通を目指しているが、静岡工区だけ着工できていない。静岡県とJR東海の話し合いは平行線が続いており、開通の遅れは避けられない状況となっている。
静岡県がJR東海の工事を承諾していない理由は、大井川の水に影響が出るとの懸念が残っているためだ。工事によって大井川の水が静岡県外へ流出し、JR東海が示した方法や根拠では全量を戻すのは難しいと県は主張している。
水問題を解決策として、JR東海側が昨年4月に示したのが「田代ダムの取水抑制案」。県の水資源専門部会で議論され、県の事務方や大井川流域の首長らが有力案と理解を示していた。ところが、川勝知事は「トンネル工事と田代ダム案は別の事柄」と認識に違いがある。
■県民から「田代ダム案」の問い合わせ 県が現状を回答
こうした経緯から、県民から「田代ダム案の実現性はあるのか?」、「そもそも田代ダム案とは、どんな内容なのか」といった問い合わせが県に寄せられているという。そこで、県は公式ホームページで現在の進捗状況や見解を公開した。田代ダムの取水抑制案について、県は次のように説明している。
「田代ダムは東京電力RPが発電用水を大井川から取水するダムです。リニアの南アルプストンネル工事では、山梨県側から掘削する(本体のトンネルより先に掘られる)先進坑が県境を越えて、静岡県側の先進坑とつながるまでの期間に、静岡県から山梨県へトンネル湧水が流出します」
「工事の一定期間、発電のための取水を抑制し、大井川に還元する方策として、県外流出する量と同量を同時期に、東京電力RPが田代ダムの取水を抑制する案をJR東海が提案したものです」
そして、県は田代ダム案が実現する可能性と、実現に向けての課題を示している。現状、「①渇水期の取水抑制」、「②東京電力RPの確約」、「③法制上の問題」と3つの課題があるという。
①冬場や渇水期に、県外へ流出するトンネル湧水と同量を田代ダムで取水抑制できるのか。
「取水抑制によって県外流出と同じ水量を大井川に流すためには、河川流量が減少し、利用可能量が低下する時期においても十分な利用可能量が存在しなくてはなりません。現在、JR東海からは2つの検討結果が示されており、詳細を確認するため、全データ・解析結果の提供を要請しています」
②JR東海は、東京電力RPから田代ダム取水抑制案に協力する確約が必要である。
「JR東海は『今後、関係者のご理解を得た上で、県外流出量の測定結果の報告や大井川取水口での取水抑制など具体的な運用方法について東京電力RPと協議して参ります』と説明しています。JR東海は東京電力RPから取水抑制案に協力する確約を得る必要があると考えます」
③JR東海が東京電力RPに対し、取水抑制により発生する損失を補償するとした場合、法制上問題がないか。
「東京電力RPは発電するために必要な量の水を、大井川から田代ダムへ取水する許可『水利権』を持っています。JR東海からは、取水抑制案が水利権の譲渡には該当せず、河川管理者の承認は不要とする国土交通省の見解が示されました。取水抑制により発生する損失の補償が河川法上、禁止されるものではないという認識でよいか現在、国土交通省に確認しています」
県は、この回答が1月19日時点のものとしている。JR東海との対話の進捗に合わせて更新していくという。
静岡県が公開した田代ダム取水抑制案の説明
よくある質問 田代-14 (pref.shizuoka.jp)
(SHIZUOKA Life編集部)