2023/03/30
リニア新幹線は推進?見直し? 市民のメリットは? 静岡市長選の候補者3人の主張
■静岡市長選に立候補3人 リニア推進2人、反対1人
静岡市長選は3月26日に告示され、4月9日が投票日となっている。争点の1つとなっているのが、JR東海が計画しているリニア中央新幹線。工事によって大井川の水量が減少する懸念が指摘されている一方、静岡工区だけ着工できていない状況に批判の声もある。静岡市長選に立候補した3人の候補者は、推進派2人、反対派1人の構図となっている。
JR東海が進めているリニア中央新幹線工事は現在、静岡工区のみ工事を開始できていない。工事によって大井川の水が失われる不安をJR側が払しょくできていないと静岡県の川勝平太知事が強く主張しているためだ。
JR東海は2027年のリニア開業を目指していた。ただ、現在も静岡工区の工事を開始するめどは立っておらず、予定の遅れは避けられない状況となっている。
■推進派2人は リニアのメリットと必要性強調
今回の静岡市長選では、リニア中央新幹線も争点の1つとなっている。推進を訴える候補は2人。自民党の元県議・山田誠さんはリニア開通のメリットを次のように示している。
「リニアを通すことで、のぞみやひかりを静岡駅に停車してもらい、静岡市の認知度が上がります。静岡市の交流人口の増加、移住者の増加が見込めます」
ただ、リニア開通後、のぞみやひかりがどのくらいの頻度で静岡駅に停車するのか、JR側は明らかにしていない。山田さんは現状では地質調査が不十分なことや大井川の水量減少に関する明確なデータがないことを指摘し、環境への影響を考えた上で開通を推進している。
山田さん同様、推進の立場を明確にしているのが、元副知事の難波喬司さん。リニア工事に慎重な姿勢を崩さない川勝知事の右腕として長年、リニアの問題に取り組んできたが、川勝知事と対立する自民党市議団と政策協定を結んだ。その中には、リニア事業の着実な推進が含まれている。
難波さんは、リニア事業が国の認可などの手続きを経て行われている民間事業と指摘。静岡市は南アルプスの環境に関するデータを保有しているため、適切な環境影響評価が行われるよう積極的に関与すべきとした上で、次のように主張している。
「リニア事業は品川―名古屋間の全線同時開業で初めて投資効果が生まれます。沿線自治体のほとんどが賛成し、すでに事業が行われている段階でもあります。その推進に影響力のある首長は、個人としてどのような価値判断を持っていたとしても、行政判断としてはリニア事業に協力すべきです」
■反対派の候補 「リニアは時代に合っていない」
一方、リニアに反対しているのが共産党の鈴木千佳さん。事業の見直し、中止を求めている。工事によって自然に影響が及び災害にもつながりかねないと指摘し、事業内容は時代錯誤と強調する。
「新幹線の4倍の電力を使って大都市間の移動時間を短縮する事業が、今の気候危機を打開しようという時に時代に合っていません。新型コロナ感染拡大によってリモートワークが進んでいく中で必要な事業とは思えません」
事業推進か見直しか。リニア中央新幹線の問題は、どの候補者に票を投じるか判断材料となる。
(SHIZUOKA Life編集部)