2023/05/03
ビジネスの手法は独学 アルバイト禁止の高校時代に自営で生き物の仲介業
■iZoo白輪剛史園長 高校生で顧客名簿作成や交渉
高校卒業から1年で年商は3000万円に上った。河津町の体感型動物園「iZoo」を運営する白輪剛史園長の連載。第2回のテーマは「独学で身に付けたビジネスの手法」。爬虫類の卸売業を成功させた白輪さんは、高校時代に商売のベースができていた。
私が卒業した静岡農業高校は当時、アルバイトが禁止されていました。こっそり放課後にガソリンスタンドや寿司屋でアルバイトをしているところが見つかった同級生は停学になっていました。それなら、自分で商売をしようと考えました。自営は禁止されていませんから。
高校生の頃、熱帯魚の専門誌があって、売ります、買います、譲りますのコーナーがありました。雑誌を通してマニアが熱帯魚を売り買いするわけです。今みたいに個人情報が厳格ではなかったので、マニアたちの住所や電話番号も載っていました。その情報を見て、誰が何を求めているのか毎号ノートに写していました。これが、顧客にも仕入れ先にもなる重要な名簿となります。
どうやって顧客を増やそうか考えた時、1つのアイデアが思い浮かびました。「売ります」の情報を掲載している相手に対し、絶対に手元にないだろうという熱帯魚の種類を指定して「持っていませんか?」と電話します。
すると、相手は「すみません、持っていません」と、こちらに負い目を感じるんです。こうなると相手は一歩引いたところからスタートするので、こちらのペースに巻き込めます。相手は「何かほしいものはありますか?」、「こんなものはないですか?」と聞いてきます。自分の手元にある熱帯魚を全て明かし、自分のほしい熱帯魚も伝えてきます。
■高校1年で毎月30万円の売上 高校2年でマニア兼任から業者に専念
その情報をもとに、私は売買を仲介します。同じ方法で顧客を増やしていきました。最初に相手より優位に立つと交渉を進めやすくなります。今に至るまで、こうしたビジネスの手法は全て独学です。自分には何もないゼロの状態から始めて、どうやったら相手とコミュニケーションを深められるかを常に考えています。
高校1年生の時は、熱帯魚の他にも爬虫類の仲介もやっていて、毎月30万円くらいの売上がありました。個人に買ってもらうことも、お店に販売することもありました。生き物マニア兼仲介業者の高校生という感じです。両親は自営業ではなかったので、商売感覚は突然変異ですね。
業者専門の高校生となったのは、高校2年生の時です。神奈川県に爬虫類専門店があり、その店が毎月、爬虫類の価格表をつくっていました。最後のページが売ります、買いますのコーナーでした。爬虫類好きの人たちが自分の売りたい、または買いたい爬虫類に関する原稿を店に送ると、そのページに掲載される仕組みです。
私も、しょっちゅう原稿を載せてもらいましたが、ある日、店主から電話がかかってきました。「白輪くんはマニアか業者か分からないから、原稿は載せない」と言われました。原稿を掲載する対象はマニアで、私の活動はマニアの域を超えていたわけです。店主には「原稿は載せなくて良い」と答えました。この瞬間、業者になったわけです。
■高卒1年目で年商3000万円 日本平動物園の就職試験は…
高校卒業後も、そのまま業者として仕事をして、1年目で年商は3000万円くらいになりました。ただ、高校3年生の時は就職活動をしています。
静岡市立日本平動物園で働きたいと思って、公務員試験を受けました。学科に受かって、面接に行った時です。面接の案内には服装自由と書いてあったので、私服で面接会場に行ったら、私以外の受験者が全員リクルートスーツを着ていました。
服装自由でリクルートスーツを着るなんて聞いたこともないし、習ってもいません。これが一般常識なのかと思ったら、ここにいる人たちとは一緒に働けないと考えて、面接を受けずに帰りました。
面接を受けて仮に合格したとしても、周りの人とは上手くいかず、すぐにやめていたと思います。高校生の頃から今も同じですが「普通にはなりたくない」と思っています。普通には代わりがいるので、常にオンリーワンを目指しています。
<プロフィール>
白輪剛史(しらわ・つよし)。1969年生まれ、静岡市出身。静岡農業高校卒業。幼少期から爬虫類に興味を持ち、1995年に動物卸商「有限会社レップジャパン」を設立。2002年から国内最大級の爬虫類イベント「ジャパンレプタイルズショ―」を開催。2012年に体感型動物園iZooをオープンして園長に就任。