2023/06/05
常識変える厚さとデザイン おしゃれで遊び心いっぱい ギフト用トイレットペーパー
■富士市の新橋製紙が発売 「富士山ふふふロール」
トイレットペーパーの概念を変える。日本で最初に現在の規定のトイレットペーパーを生産した静岡県富士市の製紙会社「新橋製紙」が、ギフト用トイレットペーパー「富士山ふふふロール」の販売を開始した。富士山をモチーフにした和柄の包装紙は遊び心いっぱいのデザインで、キャリーケースにもこだわった。トイレットペーパーの厚さは一般的な市販品の1.5倍と使い心地が良く、薬品の使用を必要最低限に抑えるなど安全性にも妥協がない。
創業75年の老舗製紙メーカーがトイレットペーパーに新たな価値を吹き込もうとしている。富士市にある新橋製紙が発売した「富士山ふふふロール」。贈り物を前提にしたトイレットペーパーだ。
最大の特徴はデザイン。富士山と和柄を組み合わせた包装紙になっている。部屋に飾っても違和感がなく、包装紙を開けて使うのがもったいないと感じるほどデザイン性が高い。企画から商品化まで約1年。商品開発の中心を担った伊藤和枝さんの言葉には自信とこだわりがにじむ。
「トイレットペーパーは贈り物としては、見た目で遠慮されてしまう傾向があります。ギフトにしたくなる商品をつくりたいと思いました。元々は4種類のデザインにする予定でしたが、どれも良くて絞り切れず6種類になりました」
■写真では気付かない よく見ると細部まで仕掛け
「富士山ふふふロール」は、トイレットペーパー8ロールが専用のキャリーケースに入っている。6種類のデザインには全て富士山が描かれ、それぞれに思いが込められている。例えば、パステルカラーの優しい色使いが特徴的な「B市松」は、「子孫繁栄」や「事業拡大」の意味を持つ市松文様を選んだ。
デザインは美しいだけではなく、遊び心もいっぱい。「無病息災」を意味する菱文様を使った「P菱」はカラフルな菱形が描かれているが、よく見ると富士山をイメージした菱形が入っている。写真では分からないほど、細かいところまで仕掛けが詰まっている。
そして、伊藤さんが「一番、時間がかかったかもしれない」と話す力作はキャリーケース。8ロールがきれいに収まる八角形の箱には、富士山をデザインした持ち手が付いている。しかも、富士市から見た富士山。宝永山が描かれているのだ。キャリーケースは段ボールでできているため、細かい柄が印刷できなかったという。富士山と和柄を組み合わせるイメージをそのままに、デザインを再考した。
新橋製紙が「富士山ふふふロール」をギフト用トイレットペーパーとして自信を持って販売する理由は、見た目だけではない。根底には、確かな品質への自負がある。
■業務用メーカーの確かな品質 厚さ1.5倍で長持ち
新橋製紙のトイレットペーパーは業務用で、病院、介護施設、ホテルなどで使われている。化学物質過敏症のようなアレルギー体質の人や体が弱っている人の使用を想定している。原料は100%上質古紙で、無漂白を徹底している。香料も一切使用せず、薬品は必要最低限に抑えている。伊藤さんは安全性の大切さを説明する。
「せっかくギフトでプレゼントしても、香りや素材が体に合わない方には喜んでいただけません。見た目と品質、どちらも贈り物にふさわしい商品になっています」
もう1つの特徴は、トイレットペーパーの厚さにある。市販されている商品の1.5倍の超厚手で、一度使うとクセになるという。厚みがあると使用する量が少なくなるため長持ちする。
トイレットペーパーは生活必需品である一方、贈り物という考え方が浸透しているとは言えない。「富士山ふふふロール」の価格は3300円(税込み)と決して安くない。売上の一部は、富士山保全のために寄付するという。商売としての勝算はあるのか。伊藤さんは、こう話す。
■トイレットペーパーの常識変える 勝算よりも挑戦
「勝算よりも、ギフトとしてのトイレットペーパーを広めたい思いが強かったです。デザイン性と安全性が高いトイレットペーパーは十分にギフトとして喜んでもらえると思います。富士山は日本中で愛され、日本が誇る財産です。海外から来た観光客の方のお土産にもぴったりだと思います」
伊藤さんの思いは経営陣にも届いた。就任から1年半が経つ山﨑清貴社長は「単純な利益だけではなく、社員の思いを形にできる会社にしていきたいと思っています。既存事業だけでは会社は衰退します。新しいことに挑戦する気持ちを大切にしています」と話す。佐竹義史常務も「勝算より心意気です。この商品をきっかけに、安心して使える業務用トイレットペーパーの良さを広く知ってもらえたらと思います」と語った。
日常生活に不可欠なトイレットペーパーをギフトの選択肢に。老舗製紙メーカーが常識や価値観を変えようとしている。
(間 淳/Jun Aida)