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2023/06/23

週1回定休日、営業時間は午後7時まで 常識覆すスーパー 来店客のメリットいっぱい

5月末に袋井市でオープンした「超タカラ屋」

■タカラ・エムシー 袋井市に「超タカラ屋」開店

スーパーの常識を変える挑戦がスタートした。静岡市に本社を置くタカラ・エムシーが、新しい業態のスーパーマーケット「超タカラ屋」を袋井市に開店。営業時間は夜7時まで、毎週月曜日は定休日といった驚きの戦略で鮮度と低価格を両立しようとしている。

 

コンセプトは「超鮮度」、「超価格」、「超元気」。袋井市に先月オープンした「超タカラ屋」は、スーパーの新しいモデルになるかもしれない。

 

タカラ・エムシーは静岡県を中心に「フードマーケットマム」を展開している。他にも、ブラジル人向けの食材を扱う「アソーゲタカラ」や世界各国のワインを集めた「PRIME FOODS MARKET」など、業態の違う店を運営するところに会社の特徴がある。上野拓社長は、こう話す。

 

「新店を出したり、改装したりする以外にも、違った形のスーパーに挑戦したいと常に考えています。スーパーの常識を覆すコンセプトの店に挑戦したいと思っていたタイミングで、売りに出ている建物を見つけました」

 

建物を購入すれば家賃がかからないため、低コストで運営できる。さらに、商品のロスや人件費を抑えれば、品質の高い商品を安く提供できると上野社長は考えた。

コンセプトは「超鮮度」、「超価格」、「超元気」

■毎週月曜定休日で在庫なし 新鮮で安い商品提供

まず、スーパーの常識では考えられない定休日を設けた。精肉、鮮魚、野菜といった生鮮食料品は基本的に毎日売り切り、少なくとも定休日前日の日曜日までに全て売り切る。在庫を抱えないことで「超価格」と「超鮮度」を実現させる。実際、値引きをするケースはあるものの、商品を処分するロスは発生していないという。欠品も出ないように緻密に計算している。

 

営業時間は午前9時から午後7時までと短い。これによりスーパーでは一般的な従業員の2交代制が必要なくなるため、人件費が大幅に削減できる。人件費を抑えている点も、超価格につながっている。

 

さらに、定休日をつくったことで、従業員は「超元気」で仕事ができるという。上野社長は「定休日は店舗責任者の心の健康につながります。シフト上は休日でも店が開いていれば、売上やクレーム対応などが心配で心が休まりません。働き方改革の意味合いもあります」と語る。

 

超タカラ屋は今までにないコンセプトの店だけに、来客の反応を見ながら対応する柔軟性が一層求められる。メインターゲットとするのは30~40代の子育て世代。マネージャーの橘祐介さんは、来客の意外な傾向を感じている。

 

「30代前後のお客さまは値段よりも、ほしい物を優先する傾向があります。特に惣菜が顕著です。店では、朝と午後3時に惣菜をつくって並べます。夕方の時間帯は朝つくったものを値引きして、出来立てとの差別化を図っていますが、30代前後のお客さまは温かい惣菜を買う人が多いです」

 

■折込チラシ廃止へ 完全ウェブ化にメリット

また、混雑の時間帯も既存のスーパーとは違いがあるという。一般的には閉店1時間前になると客数が減るのに対し、超タカラ屋は閉店までの2時間にピークを迎える。こうした今までになかった傾向を読みながら、店舗運営を進めている。

 

スーパーの象徴ともいえる折り込みチラシも近い将来、完全ウェブ化する。新聞を購読せず、パソコンやスマートフォンで情報を集める若い世代にはチラシの効果は薄い。そして、チラシをつくらないメリットは他にもあると上野社長は説明する。

 

「あらかじめチラシで値段のしばりをかけると柔軟に対応できなくなります。その時に一番鮮度が高くて、安く仕入れられるものを店頭に並べるようにしています」

 

超タカラ屋のオープンが決まった際、定休日が設けられていることに地元の人からは不満の声も上がった。中には「客目線ではない」とタカラ・エムシーの本社にメールもきたという。

 

ただ、定休日は「超鮮度」、「超価格」、「超元気」のコンセプトには不可欠。上野社長は「店に足を運んでいただければ、理解していただけると思っています。常識外れと感じられることも、お客さまに還元するための方法ですから」と自信を見せる。超タカラ屋が上手くいけば、既存のマムでもノウハウを生かす方針。数年後には定休日や営業時間の短縮が、業界の当たり前に変わっているかもしれない。

 

(間 淳/Jun Aida

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