2023/06/25
「犯罪では?」「仕組みおかしい」 高校バスケ部顧問の体罰認定 私立に移って処分なし
■怪我させたり侮辱したりする言動 体罰やパワハラと認定
2018年から2020年に県立静岡西高校の女子バスケットボール部で起きた男性顧問による不適切な言動に対し、第三者調査委員会が体罰やパワーハラスメントと認定した。当時、顧問を訓告とした静岡県教育委員会の判断も「不適切」と指摘した。この顧問は2021年3月に静岡西高校を退職し、県内の私立高校に移ったため、新たな処分はないという。
第三者委員会による報告書によると、2018年から2020年に静岡西高校の女子バスケットボールで顧問をしていた男性は、練習の際に生徒の髪をつかんで怒鳴ったり、生徒の顔にボールを投げつけて鼻血が出る怪我をさせたり、練習試合中に生徒の顔の側面を叩いたりした。
さらに、動きの良くない生徒や判断が遅れた生徒に対して、ユダヤに伝承する泥人形で「未完成」を意味する「ゴーレム」などと呼んでいた。第三者委員会は弁護士や大学教授ら専門家で構成され、今年3月末までの10か月間に13回の委員会を開催。こうした言動が体罰やパワハラに当たると認定した。
県教委は当時、この男性顧問に対して「訓告」としていた。この判断についても、第三者委員会は「懲戒処分に付すべき事案」と誤りを指摘した。県教委は当時の判断が間違っていたと認め、男性顧問が問題のあった言動を否認したため事実確認が難しかったなどと説明した。池上重弘教育長は次のようにコメントを発表している。
「当時の生徒、保護者の皆さまには、第三者調査委員会の報告の公表に至るまで、長期にわたってご心労をおかけしました。関係の皆さま及び県民の皆さまの教育行政に対する信頼を損ねたことにお詫び申し上げます。教職員による体罰及び不適切な言動に関しましては、人権感覚の欠如が招くものであり、重点的な対策を進めていく必要があります」
■県民から疑問の声 「体罰ではなく犯罪」、「世間の感覚とずれている」
県教委は再発防止策として、ガイドラインの作成やアンガーマネージメント研修などを進めるとしている。ただ、この男性顧問は2021年3月末に静岡西高校から別の私立高校に移って県教委の管轄外となったため、改めて処分はできないという。指導者資格に関しては、日本バスケットボール協会から2年間の停止処分を受けている。
第三者委員会の報告や県教育委員会の対応について、県民からは疑問の声が上がっている。体罰という認定については「髪を引っ張ったり、叩いたり、怪我をさせたりするのは犯罪。暴行や傷害として扱うべき」、「学校内の問題として考えていることが世間の感覚と大幅にずれている」という意見があった。
また、「体罰やパワハラを認定するまでに時間がかかり過ぎ」、「私立なら教師を続けられることや、私立に移ったら新たな処分ができない仕組みにも問題がある」という声もあった。
(SHIZUOKA Life編集部)