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2023/07/02

深刻な教員不足解消につながるか? 人材確保へ採用試験前倒し 現役教師は効果に疑問

自治体に教員採用試験の前倒しを求めた文部科学省

■静岡県の教員採用試験 来年度は2か月前倒し

売り手市場が続き、幅広い業界が人材確保に苦労している。かつては難関だった教職も、今は深刻な人材不足に直面している。国による教員採用試験前倒しの要請を受け、静岡県では来年度から例年より2カ月早い5月に実施すると決めた。民間企業や地方公務員の試験を意識した動きだが、効果があるかは不透明な状況だ。

 

文部科学省は5月末、公立学校の教員採用試験の前倒しに関する協議会を開催し、全国の自治体に6月16日を目安に1次試験を実施するよう要請した。また、受験対象者を大学3年生まで拡大することや年に複数回試験を実施することも求めた。

 

これを受け、静岡、浜松の政令市を含む静岡県内の教員採用試験は来年度、5月11、12日に実施される。例年より約2か月の繰り上げとなる。静岡市教育委員会は「民間企業と同じスケジュールになるため、教職が選択肢に加わる」、「内々定が早まることにより、教職に就く心構えを醸成できる」と期待される効果を挙げている。

 

教員試験の前倒しの背景にあるのは、深刻な教員不足だ。6月に公表された文科省の調査では、都道府県と政令指定都市にある教育委員会の4割以上が「教員不足が悪化している」と回答した。2021年度に計画通り配置できなかった教員の数は2500人を超えているという。

 

■人材獲得の効果は? 現役教師からは疑問の声

ここ数年は、就職希望者の数よりも企業の採用希望数の方が多い「売り手市場」が加速している。就活生にとっては企業の選択肢が多くなり、就職のハードルが低くなっている。人材不足は、教職も例外ではない。ただ、教員採用試験の前倒しが、人材獲得につながるかは不透明な部分がある。

 

教員採用試験には2次試験がある。来年度から1次、2次試験ともに前倒しとなるが、2次試験の合格発表は8月中旬。民間企業では、6月や7月に内々定を出すところは多い。6月より早く事実上の内々定を出す企業もある。つまり、日程面で民間企業と競争しても勝機は少ない。

 

また、現役の教師が指摘するのは教育実習の問題。採用試験が繰り上げされれば、例年5月から6月に実施される教育実習にも当然、影響が出てくる。この教師は次のように話す。

 

「教育実習も2か月前倒しになると、春休みや新年度のタイミングと重なります。学生にとっても教育現場にとっても現実的に難しいと感じます。教育実習の準備が十分にできず上手くいかなければ、結果的に教員になりたい学生は減ると思います」

 

そして、こう続ける。「そもそも日程の前倒しでは根本的な解決にはなっていません。教員になりたいと思ってもらえる職場環境を整えることが先です。教員の仕事に魅力があれば希望者は増えるはずです」。採用試験の前倒しは安易な策で、現場の教員には「文科省や教育委員会の焦りを露呈している」と映っている。

 

SHIZUOKA Life編集部)

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