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2023/07/01

臭い対策万全で床暖房完備 人間もくつろげる保護猫カフェ 猫のユニークな名前の由来は?

「猫宿町」は人間も猫もくつろげる心地良さ

■静岡市の「猫宿町」 動物病院の院長が運営

コンセプトは「猫も人間もくつろげる空間」。静岡市にある譲渡型の猫カフェ「猫宿町」には、デザインも機能もこだわりが詰まっている。生活する猫たちの名前も石炭やアヒージョなどユニーク。命名の仕方にはルールがあった。

 

来店すると、あまりの心地良さに時間を忘れる。静岡市中心部で再開発が進むエリア・人宿町で3年前にオープンした猫宿町。最大20匹ほどの猫が暮らしている。譲渡型の猫カフェのため、里親が見つかると、新たな保護猫を迎え入れる仕組みだ。

 

猫宿町を運営するのは、静岡市の「あん動物病院」で院長を務める大石将司さん。動物病院と連携した猫カフェは全国的にも珍しい。大石さんは猫宿町を始めるにあたり、東京都内の猫カフェを視察した。そこで一番気になったのは臭いだった。

 

「猫を飼ったことがない人の中には、猫は臭いというイメージを持っている人もいます。店の衛生面は人にも猫にも大切です。臭い対策には重点を置きました」

人慣れしてから店内に出る猫宿町の猫たち

■臭いが外に流れる構造 床のほぼ全面に床暖房で冬も快適

猫宿町では臭いが全く気にならない。理由は臭いの原因となるトイレの位置と換気扇にある。トイレは店内の端の隠れた場所につくり、その横に大きな換気扇をつけた。臭いが店内にこもらず、外へ流れる仕組みとなっている。また、業務用の除菌脱臭機も設置している。

 

店内の床は全面張り替えができるため、汚れや臭いが気になったら新しく変えている。大石さんは「人間が快適に感じられる場所は、猫にとっても居心地の良い場所となります」と説明する。

 

居心地の良さのこだわりは床暖房にもある。一般的に猫の過ごしやすい気温は20~28度とされている。店内のどこにいても猫が寒く感じないよう、床のほぼ全面に床暖房を5か所に設置。快適さを追求してコストを惜しまなかったという。

 

店内のデザインは、「猫宿町」の店名に合わせて和風にしている。障子、畳、囲炉裏など、遊び心が詰まっている。一度来店した人は店内のこだわりを感じる。

 

■石炭くん、アヒージョちゃん 猫の名前の由来は?

そして、もう1つ、興味を引かれるのが猫の名前だ。石炭くん、アヒージョちゃん、ミニロトくんなど、ユニークな名前ばかり。大石さんが命名の仕方を明かす。

 

「猫が病院に来たら、まずはその日が何の日か調べます。毎日、何かしらの記念日があるので、いい記念日があれば、それにちなんだ名前を私かスタッフがつけています」

 

石炭くんが病院に来た日は「石炭の日」。4匹一緒に保護されたので、みんな語尾に「たん」をつけ、木炭くん、ナポリタンちゃん、グラタンちゃんと命名した。

 

アヒージョちゃんが保護されたのは、サッカーワールドカップで日本代表がスペイン代表に勝利した日だった。そこで、一緒に保護した猫はパエリアちゃん、ガスパチョくんなどスペイン料理の名前に決めた。

猫宿町を運営する獣医師の大石さん

■寄付に頼らず自己資金で運営 機動力と決定力を重視

オープンから3年が経ち、大石さんは「おおむねイメージ通りに運営できています」と話す。理想を言えば、もっと広いところで今よりも多くの猫を受け入れたいという。スタッフの数を増やして、来店客に猫との接し方を教えたい思いもある。ただ、理想をかなえるにはコストがかかる。

 

猫宿町の運営は寄付に頼らず、全て自己資金でまかなっている。譲渡型の猫カフェのため猫を保護する活動につながっており、資金や寄付を募れば協力者が現れるかもしれない。だが、大石さんは今の方法を変えるつもりはない。

 

「個人的な思いですが、誰かのお金を使って運営すると、その方の考えも運営方針に取り入れないといけなくなるかもしれません。資金的にゆとりはできるかもしれませんが、機動力や決定力が少し欠けてくるのかなと感じています。今は自分たちだけで運営しているので、例えば猫を譲渡しようと思ったときに、どういう人に譲渡するか自分たちだけで判断できます」

 

遊び心がいっぱいで、人間もくつろげる猫宿町。大石さんは猫が店で過ごす時間、さらには猫宿町を卒業した先での生活も見据えて運営している。

 

(間 淳/Jun Aida

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