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2023/07/03

静岡県在住のハリウッド女優 芸能人の枠組み超えた本気の農業 29歳で転機

富士宮市で農業中心の生活を送る工藤さん

■2006年に富士宮市移住 生活の中心は農業

凛とした美しい姿は女優の雰囲気を醸す。そして、小麦色の肌からは農業への本気度が伝わってくる。ハリウッド映画出演の経験も持つ女優の工藤夕貴さんは、静岡県富士宮市で農業をしている。米や野菜、さらには日本酒もつくっている。

 

かつては米国を活動拠点としていた工藤さんが富士宮市に移住したのは2006年だった。その3年後には地元の酒造メーカーと共同で日本酒をつくった。現在も女優として活動しているが、農業は生活の一部ではなく、ど真ん中に位置する。工藤さんは言う。

 

「私は本気で作物と向き合っています。農業もやっている芸能人という枠組みではありません」

 

現在、1反(約100平方メートル)の田んぼで米を栽培し、1500坪(約5000平方メートル)の畑で野菜を育てている。6月に静岡県の川勝平太知事に贈呈した日本酒「純米吟然酒 賜(ギフト)」の製造では、仕込みのために毎朝5時に起床。共同開発した富士錦酒造の清信一代表が驚くほどの熱量だった。

工藤さんは自身が造った日本酒を川勝知事(左)に贈呈

■29歳で心身とも不調 食生活見直しで農業スタート

若くして女優の地位を確立し、ハリウッドでも活躍した工藤さんが農業に没頭する転機となったのは29歳の時だった。心と体のバランスを崩し、食生活を見直す必要性を感じたという。

 

「英語で『You were what you eat』という言葉があります。人間は食べ物からできているという意味で、普段食べるものに立ち返ろうと思いました」

 

自宅の庭で野菜を育てるところから始めると、どんどん農業にのめり込んでいった。体調も回復し、田んぼや畑の規模を広げていった。ほぼ全てを女優業に捧げていたといっても過言ではなかった今までの生活を見つめ直す契機となった。

 

「芸能人はどれだけ稼ぐか、どんな役をもらえるのかなどエゴに走りがちです。農業をしていると、自然の中でニコニコ暮らすのが完璧な人生だと気付きました。汗をかいて体を動かすことが元気の源で、農業は生きる原点に戻る唯一の方法だと感じています」

 

■無肥料無農薬の米や野菜 オーナー務めるカフェで提供

農業の楽しさは、難しさにもあるという。相手は自然。前年に上手くいったことが今年も同じようにいくとは限らない。工藤さんは「1年に1回の実験」と表現する。試行錯誤を繰り返すだけに、思った通りに育った米や野菜を収穫できた時の喜びは大きい。無肥料無農薬で育てた自慢の米や野菜は、工藤さんが富士宮市でオーナーを務める「カフェ・ナチュレ」で提供されている。

 

小麦色の肌を見ながら工藤さんは笑う。「日焼けは気にしていないですね。体が元気じゃないと食べることもつくることも楽しめません。農業はやめられません」。その言葉と表情からは演技ではない充実感が伝わってくる。

 

(間 淳/Jun Aida

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