2023/07/08
バスに園児置き去り 園の54%が「今後も発生する」 牧之原市では熱中症で女児死亡
■園児をバスに置き去りにした運転手 5.6%→1.5%に減少
衝撃の実態が明らかになった。通園バスの安全装置普及を進める東京都の三洋貿易が、車内置き去りの実態を調査した結果を公表した。昨年9月には静岡県牧之原市で通園バスに取り残された女の子が熱中症で死亡する事故が起きている中、「今後も発生する」の回答は54%に上った。
三洋貿易は今年5月26日から6月5日にかけて、幼稚園や保育園の送迎担当者(20~69歳)267人にオンラインで調査を実施した。その結果、過去1年間に「子どもだけを送迎バスに残して車を離れたことがある」と答えたのは1.5%で、昨年の5.6%から減少した。
ただ、送迎バスに園児を置き去りにした運転手はほとんどいなかったにもかかわらず、「今後さらに増加」、「少しは増加」、「今と変わらないくらい発生」を合わせた回答は54.3%と半数以上を占めた。「少しずつ減る」と「今後減っていく」の合計45.7%を上回っている。
園児の置き去りが起こる理由(複数回答)については、「送迎担当者や職員の意識が低いから」が最も高く56.6%、次いで「人手不足だから」の49.1%、「業務過多だから」の42.3%、「登園確認等のルールが形骸化しているから」の41.9%となった。
■自分が勤務する園でも事故 4分の1が「発生する」と回答
自分が勤務する園で園児が車内に取り残される事態が起こると思うかを問う内容に対しては、「発生しない」が76.0%、「発生する」が24.0%だった。安全装置の設置義務化は「賛成」が84.3%と、「反対」の3.7%を大きく上回った。「どちらでもない」は12%となった。
園児の通園バス置き去りをめぐっては、昨年9月に牧之原市の認定こども園で、車内に取り残された3歳の女児が熱中症で死亡した。安全管理マニュアルの整備や送迎バスの安全装置導入が全国的に進められている。実態調査では園の意識や行動の改善が表れる結果となったが、半数以上が園児の置き去りは「今後も起きる」と回答しており、十分とは言い難い。
今回の調査結果を受け、焼津市立総合病院小児科科長などを歴任したNPO法人「Safe Kids Japan」の山中龍宏理事長は「日本社会全体で熱中症事故に対する認識が高まっていると感じます。しかし、認知が拡大したにもかかわらず、多くの人が依然として自分の身には起こらないと考えていることが読み取れる結果となりました。この『自分だけは大丈夫』という考え方は、車内置き去りのみならず、あらゆる事故において共通しています」などと分析している。
(SHIZUOKA Life編集部)