2023/07/18
事業者支援や市民サービス向上 ふるさと納税で好循環 全国トップクラスの返礼品数
■ふるさと納税の寄付額 全国11位の焼津市
寄付金は結果や手段であって、目的ではない。静岡県焼津市のふるさと納税寄付額は全国の自治体でもトップクラス。ふるさと納税といえば焼津市というブランドを確立して返礼品を提供する事業者は販路を拡大し、寄付額を活用して地域活性化につなげている。
今でこそ多くの自治体が力を入れているふるさと納税。焼津市は2014年度に導入した先進的な自治体だった。マグロやカツオをはじめとする地元の海産物を返礼品にして、地場産品の産業振興につなげようと考えた。
返礼品の質の高さは人気となり、寄付額は増えていった。2021年度の寄付額は64億8500万円で、県内の自治体では断トツ。全国でも11番目となっている。
注目度が高いことで返礼品を提供する事業者のモチベーションが上がり、寄付額が増える好循環が生まれている。焼津市ふるさと納税課の松永友視さんは、こう話す。
「焼津市の地場産品はポテンシャルが高く、ふるさと納税の返礼品で広く知ってもらえたと思います。ファンがついてくれたことで多くの寄付が集まっています。地元の事業者も寄付してくださる方のニーズに応えようとしています」
■返礼品は約1400 コロナ禍でも事業者が販路拡大
焼津市への寄付額が多いのは、返礼品の充実も大きな要因となっている。現在、返礼品の数は約1400と全国的に見てもトップクラス。同じ商品でも小分けにするなど、ニーズに合わせている。
市は返礼品の発送や何万件にも上るワンストップ申請の対応といった事務作業は外部委託し、事業者からの相談や寄付を希望する人からの問い合わせに業務を特化している。返礼品の充実を図るなど、限られた人員で事業者をサポートするためだ。
こうした事業者と市の連携は新型コロナウイルス感染拡大の苦境に生きた。2020年度は外出を控えて自宅で過ごす時間が増え、海産物やビールを中心に返礼品の需要が高まり、ふるさと納税の寄付額が伸びた。海産物を販売する店では来客数が大幅に減る中、返礼品で売上の落ち込みをカバーしたケースもあったという。ふるさと納税が販路拡大につながっている。
■県内で最も多い転入超過 寄付金で子育てや観光事業充実
ふるさと納税の成功は、市民にも還元されている。寄付金は子育て、観光交流、健康増進などの事業に活用されている。人口流出が加速する静岡県の中で、焼津市は昨年度、県内で最も多い326人の転入超過となったのは、事業を充実させているふるさと納税の成功も一因となっている。
焼津市の2021年度の市税は203億円で、市税を含めた歳入は662億円だった。ふるさと納税の寄付金は歳入の約10%を占める貴重な財源になっている。ただ、松永さんは「寄付金を集めることが目的ではありません。これからも、返礼品を充実させて、市内にある事業者の産業振興につなげたいと思っています」と話す。
地場産品を広めていけば事業者の支援となり、全国にファンが増える自信もある。寄付額は、その結果であって目的や目標ではない。
(間 淳/Jun Aida)