2023/07/23
高齢者5人に1人が患者の時代 VR体験やカフェで認知症にやさしいまちづくり
■VRで認知症患者ならではの恐怖や苦労を経験
2年後の2025年には高齢者の5人に1人が認知症を患う時代がくると言われている。島田市では「認知症にやさしいまち」を掲げ、認知症患者や家族のサポートに加え、VR体験会や認知症カフェなど周囲の理解を深める取り組みも進めている。
島田市では地域包括支援センターに高齢者の総合相談窓口を設けている。相談件数は増加傾向にあり、年間で約8000件に上る。その中で、認知症に関する相談も増加しているという。市の担当者は「高齢化が進み、認知症患者は増えていきます。認知症への理解を深めて地域で支える『認知症にやさしいまち』をつくっていきたいと思っています」と話す。
島田市では認知症に関する様々な事業を展開している。「VR認知症体験会」では、VR(バーチャルリアリティ)の技術を使って、認知症の症状を体験できる。
例えば、認知症患者は物と物との位置関係を正確に把握できず、車から降りる行為が高層ビルから飛び降りる行為に誤認してしまうケースがあるという。また、足元が暗いと地面に穴が開いているように見える場合もある。
こうした時、周囲が「大丈夫だから」と声をかけても、認知症患者の恐怖心は解けない。サポートする人が前から両手を握って誘導したり、足元をライトで明るくしたりすると助けになる。
■認知症カフェや脳の健康度テスト 社会の理解深める事業
「認知症カフェ」は認知症患者や家族、地域の人など誰もが気軽に参加できる場所となっている。市内に6か所設けられており、お茶を飲みながらリラックスした雰囲気で交流を深められる。常駐している専門職のスタッフにも相談できる。
「脳の健康度テスト」は、テストの結果によって認知症を判明するものではないが、複数の認知機能の中で自分の得意、不得意を把握し、予防につなげる目的がある。
認知症は記憶力が低下していくイメージが強いが、それ以外の症状も多い。例えば年月日や自分がどこにいるのか分からなくなる見当識障害や、判断力や理解力の低下などがある。
認知症になると他にもBPSDという行動や心理的な症状が表れることもある。認知機能の低下に対する不安から、1人で歩き回ってしまったり怒りっぽくなったりするが、周りの対応で軽減できると言われている。市の担当者は「周りの方々が正しい知識を身に付ければ、認知症の方やご家族の負担は減らせます。そのためにも、認知症を体験したり学んだりする機会や交流の場を提供していきたいと思っています」と語った。
認知症の症状が出ても、住み慣れた地域に住み続けられるまちづくりへ。2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると言われる中、認知症は決して他人事ではない。
(間 淳/Jun Aida)