2023/07/28
頭ポンポンで不安解消 小さく生まれた赤ちゃんと家族を支援 ママ同士につながり
■静岡市の「ポコアポコ」 県内初の手帳を作成
静岡市のボランティア団体「ポコアポコ」は、小さく生まれた赤ちゃんの成長を見守り、その家族を支援している。創設から25年。かつてサポートを受けた母親が支援する側へと回る循環が生まれている。
苦労や喜びが分かるからこそ、力になれる。1998年に静岡県立こども病院の新生児科の医師や看護師らが立ち上げた「ポコアポコ」は、小さく生まれた赤ちゃんが退院した後、親子で集まる場所をつくる目的があった。
2007年から「ポコアポコ」の代表を務める小林さとみさんも、小さな赤ちゃんを育てる母親だった。2002年に出産した双子の娘は予定日より3か月早く産まれ、体重は927グラムと466グラム。小林さんは当初、ポコアポコのメンバーとして参加し、娘2人の子育てが落ち着いてきたタイミングで代表を任された。
「こども病院の先生は娘を助けてくれた神様みたいな存在です。その先生から『力を貸してほしい』と声をかけられたことを名誉だと思いました」
ポコアポコは、小さく生まれた赤ちゃんの成長を記録する「リトルベビーハンドブック」を静岡県内で初めてつくったことで知られている。小林さんが代表になってからは母親が主体となった。
■先輩ママが後輩ママに助言 子育て一段落でサポートする側に
県の助成金などを活用し、遊びの講師を招いた講習会や専門家による赤ちゃんの発達を学ぶ勉強会など、小さな赤ちゃんと保護者に向けたイベントを開催している。小林さんは言う。
「発足当初は病院の先生や看護師さんが中心でしたが、今は母親が母親を支援する仕組みになっています。最初は支援を受けていたお母さんが、子育てに余裕が出てきたら今度はサポートする側に回っています」
子育ては誰もが不安や苦労に直面する。小さく生まれた赤ちゃんの育児となれば、なおさらだろう。小林さんは「自分が辛かったり、苦しかったりした経験を周りに話すことで救われる部分があります。同じような経験をした先輩ママが後輩ママの話を聞くことや、ママ同士のつながりを大事にしています」と話す。
ポコアポコに参加する母親から最も多い相談は、保育園や幼稚園選び。周りの子どもよりもゆっくりと成長する我が子が園に馴染めるのか、周りの保護者はどんな反応を示すのか不安が大きいという。
■2児の母・小林代表 忘れられない医師からの言葉
こうした相談を受けた際、小林さんは自らの意見を決して押し付けない。ポコアポコの参加者複数人に声をかけ、悩んでいる母親が様々な考え方や経験を聞く機会をつくっている。小林さんは「相談に対して答えを示すというより、寄り添って色んな道があると知ってもらうようにしています」と話す。
小林さんには、ポコアポコで忘れられない記憶がある。自身の娘がまだ小さかった頃、イベントのバーベキューに親子で参加したことがあった。当時ポコアポコを運営していたこども病院の医師は、小林さんの娘を見ると頭にポンポンと触れ「大きくなったなあ」と声をかけた。小林さんは、この言葉に救われたという。
「小さい頃から娘を知っている先生に『大きくなったな』と言ってもらえるだけで、自分の子育てを褒めてもらった、認めてもらった気持ちになりました」
その医師は、すでにこども病院から離れている。ただ、思いは継承している。小林さんは「私は先生のように偉大ではありませんが、子どもたちの頭をポンポンする役割を引き継ぎたいと思っています」と力を込める。
ポコアポコが目指すのは「細くても長く続く活動」。子どもたちの成長を見届け、母親たちを支えている。
(間 淳/Jun Aida)