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2023/07/29

純米吟醸と大吟醸 違いは宴会とカウンター? 日本酒はワインと異なり「減点法」

初亀の定番商品となっている「初亀 特別純米」

■大吟醸は精米に手間 吟醸は巨大なタンクで仕込み

吟醸と大吟醸。言葉は知っていても、違いを把握していない人は多いだろう。静岡県藤枝市にある老舗酒造「初亀醸造」の橋本謹嗣社長は、宴会で提供する料理とカウンターの料理の違いを例に出す。また、日本酒はワインと違い「減点法」と表現する。

 

静岡県を代表する老舗酒造「初亀醸造」は1636年に創業した。その品質は国内外の品評会で高く評価されている。1977年には日本で初めて1万円を超える日本酒「秘蔵大吟醸 亀」が話題となり、最近は人気アニメ「ちびまる子ちゃん」とのコラボ商品も注目されている。

 

初亀醸造が現在販売している商品には「吟醸」と「大吟醸」がある。この2つの違いは精米の手間にある。玄米を削って残った部分を表す「精米歩合」が、吟醸酒は60%以下、大吟醸酒は50%以下に定められている。手間がかかっている分、大吟醸酒の価格は高くなる傾向にある。

 

初亀醸造では、大吟醸の仕込みに直径1メートル80センチ、高さ2メートルほどのタンクを使う。その中に、600キロの米を入れる。一方、吟醸は、より大きなタンクに1トンの米を入れる。初亀醸造よりも規模の大きな蔵の中には、建物の2階以上の高さがあるタンクで10トン、20トンを仕込むケースもあるという。

 

これだけ巨大なタンクになると、人の手では作業できない。タンクの中にはスクリューが付いており、かき混ぜられるようになっている。効率が良い分、価格を安く抑えられる。だが、仕込みの量が多くなるほど、タンクの内側と外側に温度差が生まれて味のムラができてしまう。初亀醸造の橋本謹嗣社長は次のように説明する。

日本酒を造って400年以上の歴史を持つ初亀醸造

■料理に例えると「大吟醸はカウンター、吟醸は宴会」

「カウンターでお客さん6、7人に料理を提供する方法と、200、300人の宴会で提供する料理の作り方は違います。人数が多くなれば、前の日から仕込まなければなりません。少人数を相手にする料理は手間をかけられる良さがあります。料理で例えるなら、大吟醸はカウンター、吟醸は宴会にあたります。仕込みの米の量でお酒の味は変わってきます」

 

手間をかけた大吟醸酒の方が吟醸酒よりも味の雑味は少ない。日本酒は、水のように角がないものほど上質と評される。橋本社長は「日本酒は減点法、ワインは加点法」と表現する。

 

「ワインは飲んだ時に他とは違う味や香りがあると評価が上がります。それに対して、日本酒は料理を主体にする黒子のような役割が最高の酒と昔から言われています」

 

減点法によって、日本酒は水のように雑味がないほど高く評価される。ごまかしの効かない難しさがある。

 

(間 淳/Jun Aida

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