2023/08/02
子育ての不安や負担を和らげる感情の整理 元保育士のカウンセラーがサロンオープン
■女性向けカウンセリングルーム 静岡市の「サロン・ド・マコモ」
長年の保育士経験と自身の子育て経験が育児に悩むママたちの助けとなっている。静岡市に女性向けのカウンセリングルーム「サロン・ド・マコモ」がオープンした。サロンを運営する松田佳美さんは、子育ての悩みを解消するには「無理して何かを変えようとしないこと」とアドバイスする。
体と心は限界に達していた。松田さんは今年3月、約17年続けていた保育士の仕事に区切りをつけた。新型コロナウイルスの流行が始まった3年ほど前、働き方を変える必要性を痛感した。
「複数の保育園に勤務して、キャリアの半分くらいは管理職でした。職場でのストレスと自分自身の子育ての苦労が重なって体調を崩し、半年ほどドクターストップがかかりました。コロナのタイミングとも重なり、働き方や生き方を考えるきっかけになりました」
松田さんは興味を持っていた心理学の勉強を始めた。勤務する保育園の許可を得て、資格を取りながら学びをアウトプットするためにイベントで出店してきた。コミュニケーションの傾向などから対人関係の問題解消につなげる「交流分析」、現在の悩みにつながっている幼少期の記憶や感情を読み解く「インナーチャイルド」、色の持つ力を活用して心を癒す「カラーセラピー」などカウンセリングの引き出しを増やし、今年6月に「サロン・ド・マコモ」を始めた。
「勉強して一歩外に出ると、世界が広がって価値観が変わりました。保育の仕事にやりがいを感じて組織で頑張ってきましたが、自分が本当にやりたいことに気付きました」
■「無理に変えようとしない」 子育ての難しさは誰のせいでもない
サロンは女性限定で、子育て中の母親などの相談を受け付けている。保育士の経験に加えて、自身も中学生の娘を育てる母親だけに、育児の苦労は理解している。松田さんは「仕事に追われていると子育てが思い通りにいかない部分もあって自分を責めていました」と話す。
カウンセリングに来る母親たちも、思い描いている育児ができずに悩んでいるケースが多いという。中には涙を流しながら苦しい胸の内を明かす人もいる。松田さんは「子育てが上手くいかないのは誰のせいでもありません。考え方次第で未来の自分は変わります」と伝えている。
まず大切なのは、「何かを変えることに重きを置かないこと」と松田さんは強調する。例えば子どもをきつく叱った時、自己嫌悪に陥って自分の考え方や行動を変えようとすると、余計に苦しむことになる。松田さんは言う。
「きつく叱ってしまった時、最初は感情を置いておいて、事実を把握するだけにとどめます。それから、なぜ叱ってしまったのかという問いかけを自分に対してしないようにします。なぜかを考えても答えが見つからず、なぜのループに入って苦しむだけです。答えを出せないと不安になり、不安は目に見えない恐怖へとつながります」
■感情を4つに分類 嫌な出来事をプラスに捉えない
まずは、子どものどんな行動や言葉に怒りが沸いたのかを自分に問いかける。そうすると、自分が怒る前兆に気付き、怒りを抑える感情のコントロールができるようになるという。「自分を変えよう」と自らにプレッシャーをかけなくても、自然と行動が変わってくる。
事実を把握できるようになったら、感情を「喜び」、「悲しみ」、「怒り」、「恐れ」の4つに分類する。嫌な出来事があった時、無理をして前向きに捉えるのではなく、自分の感情と正直に向き合って悲しみや怒りを受け入れる。精神的な苦しさを感じているにもかかわらず、「将来の糧になる」というようにプラスの感情で捉えると事態は悪化してしまうという。
育児は誰もが悩みに直面する。サロン名の「マコモ」には「ママも子どもも」の意味が込められている。カウンセリングでママの不安が和らげば、子どもも幸せになれる。サロンは予約制で、「サロン・ド・マコモ」の公式LINEから問い合わせができる。
(間 淳/Jun Aida)