2022/07/15
夏の高校野球静岡大会シード校登場 プロ出身監督の采配に注目
■第一シード・浜松開誠館は監督もコーチも元中日の選手
夏の甲子園をかけた「全国高校野球選手権 静岡大会」が7月3日、静岡市の草薙球場で幕を開けた。例年以上の激戦と言われている今夏は、7月16日から8つのシード校が登場する。本命の1つに挙げられるのが、春季大会で県を初制覇して東海大会でも頂点に立った第1シードの浜松開誠館だ。チームを率いるのは、元中日・佐野心(さの・こころ)監督。静岡県の高校野球は近年、元プロの指導者が増えている。
今夏の静岡大会は大混戦と言われている。今春の選抜高校野球大会に出場した第5シード・日大三島、昨夏の甲子園を経験している第2シード・静岡など、シード校を中心に甲子園切符が争われると予想されるが、春夏通じて初の甲子園出場を目指す第1シード・浜松開誠館への注目度が高い。
浜松開誠館は春季大会で初めて県の頂点に立つと、創部25年目で初出場となった東海大会も制した。チームを率いるのは、佐野心監督。選手として輝かしいキャリアを持つ。浜松商業3年の時に夏の甲子園に出場。専修大で首位打者やベストナインなどのタイトルを獲得し、4年では主将を務めている。社会人野球の名門・いすゞ自動車を経て、1991年のドラフト会議で中日から指名されてプロ入りした。俊足好打の外野手だった。
現役引退後は常葉菊川で部長や監督を歴任した。主に投手の指導を担当し、2007年の選抜高校野球大会優勝に貢献。当時のエースだったDeNA・田中健二朗投手らを育てた。
■元プロの指導でベンチ外の投手がエースに成長
浜松開誠館の監督には2017年に就任した。元プロの強みは技術指導だけではなく、人脈にもある。チームで投手を指導している古池拓一コーチと小島弘務コーチの2人は、佐野監督と中日時代のチームメート。投手陣の底上げを担っている。昨秋ベンチ外だった山口祥吾投手が春季大会でエースナンバーを背負い、県内や東海エリアの強豪を封じたのは、キャッチボールから見直してフォームを修正した2人の力なくしてあり得なかっただろう。
チームの「投」を強化したのが古池コーチと小島コーチの2人なら、「打」の礎を築いたのは、現在は中日で打撃コーチを務める中村紀洋氏だ。現役時代に近鉄、中日、楽天などで活躍し、豪快なフルスイングで本塁打王や打点王のタイトルを獲得。佐野監督からの打診を受け、2017年から昨年10月まで非常勤コーチをしていた。フォロースルーを大きく強くバットを振る指導はチームに浸透。佐野監督は「チームの打力はノリの置き土産」と語っている。
■他に、センバツ準Vの元近鉄投手や元近鉄の捕手も
浜松開誠館以外にも今夏の静岡大会では、元プロの監督が指揮するチームがある。浜松学院の吉田道(よしだ・とおる)監督は、元近鉄の投手。東海大相模のエースとして1992年の選抜高校野球大会で準優勝し、ドラフト2位で指名されている。怪我に苦しんで1軍登板の機会はなかったが、苦い経験を指導者として生かしている。
2012年に浜松学院の監督に就任してから、肩や肘を故障した選手はいないという。その理由は、吉田監督が「仕事量」で緻密に選手のコンディションを管理しているためだ。例えば、ある選手が約18メートルの距離があるマウンドからホームベースまで1球投げたら、仕事量は18が加算される。20球投げれば、仕事量は360になる計算だ。捕手が約38メートル離れた二塁までの送球練習を10球した場合は、仕事量が380となる。
体格などで多少の違いはあるが、吉田監督は選手1人あたりの仕事量を1日1800に定めている。どんなに体に負担が少ない投げ方をしていても、消耗品である肩や肘は疲労や投げ過ぎで故障のリスクがある。その可能性をできるだけ低くしようという意図がある。
吉田監督は甲子園準優勝投手として近鉄に入団したものの、肩や肘の故障で悩まされた。プロ生活は、わずか4年で終幕。怪我をすれば勝負する機会さえないと身をもって知っている。
浜松商の高岸佳宏監督も元プロの捕手だった。1975年にドラフト外で近鉄に入団。1軍の出場機会はなく、3年間でユニホームを脱いでいる。その後は、プロゴルファーに転身。中学硬式野球チーム「浜松リトルシニア」でコーチを務め、聖隷クリストファー出身で元中日の投手・鈴木翔太氏を指導した。2000年の夏以降、甲子園から遠ざかっている名門復活を託された。
負けたら終わりの高校野球。監督の采配が勝敗を分ける時もある。プレーで体現するのは選手だが、プロ出身の監督が勝負所でどんなタクトを振るのかも注目される。
(SHIZUOKA Life編集部)